デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

さあ、ご覧!(嫌だ!)。 ザ・ブルード/怒りのメタファー

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被害妄想を怒りに転化させ、更に実体化させる・・どういう精神状態に置かれるとこんな話を思いつくのでしょう。

カナダが世界に誇る変態監督、初期の問題作です。

ザ・ブルード/怒りのメタファー

1979年/デヴィッド・クローネンバーグ監督)


アングラ実験演劇を思わせる二人芝居・・実は公開精神治療。というオープニングからただならぬ緊迫感。

精神科医ラグラン(オリバー・リード)は、人間の感情を肉体に転化させる実験を行っていました。

患者のひとりノーラ(サマンサ・エッガー)は、幼少期からの被害妄想を怒りに転化、巨大な体外腫瘍を擬似子宮として自身の憎悪の化身を産み落とす・・。

生まれた子供たち(そう、一人じゃないんですよ。わらわらいるのよ)は臍のない奇怪な顔のフリークス。

ノーラの怒りの趣くままに、代理殺人を繰り返します。

例によってカナダの荒涼とした景観(しかも冬)が、病んだ精神点描を見事にアシスト。

“怖い”の定義は人によって様々だと思いますが、これは間違いなく“怖い”映画。

不意を突いて大人を執拗に殴り続けて撲殺する不気味な顔の子供たち・・腫瘍を喰いちぎって胎児を取り出し、愛おしそうに嘗め回して血だらけの顔でニヤリと笑うサマンサ・エッガー・・。

怖いにも程があります(今じゃ絶対撮れない絵柄と設定ばかり)。

「光る目」のようなスマートさも、「ザ・チャイルド」のような開放感もなく、ただひたすら内へ内へと閉塞していく絶望のスパイラル。

この監督の作品の連続鑑賞は精神衛生上大変危険なので、適度に別のもの(人妻の癒し系AVとか)を挟むと良いと思います。

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