どうもこの映画を観た人の多くは、主人公一家の蛮行に拒否感を、アメリカン・ニューシネマなエンディングに違和感を覚えているようです。
私はそこがツボだったのですが・・(世間との壁は山よりも高く、溝は海よりも深い)。
しかし、今回見直して再認識。この悪意の塊は間違いなく傑作。
このBlu-ray、何と前作「マーダーライドショー」とセット(2枚組)で1520円。安い!
確かにオーティス(ビル・モズリー)もベイビー(シェリ・ムーン・ゾンビ)もスポルティング(シド・ヘイグ)もやっている事はとんでもなく鬼畜。タイトル通り“悪魔も見放す”犯罪一家です。
彼らを追うワイデル保安官(ウィリアム・フォーサイス)は、兄を殺された怒りで完全にイッてしまったサイコ野郎。
逮捕したマザーファイアフライは留置所で刺殺しちゃうし、殺し屋雇って拉致したオーティスらに拷問三昧の挙句放火(逮捕も拷問も勝手な死刑執行も全て神の名のもとに行っているのがミソ)。
オーティスは自ら悪魔を名乗っていますが、その風貌といい、椅子に両手を打ちつけられる受難といい、キリストが投影されています(映画のポスターは“最後の晩餐”のパロディ。写真上)。
鬼畜対狂人の殺人絵巻に感情移入とか勧善懲悪とかの尺度持ち出されてもお門違いってもんです。
オープニングの「ミッドナイト・ライダー」(オールマン・ブラザーズ・バンド)からエンディングの「フリーバード」(レーナード・スキナード)まで音楽の使い方も完璧。
同情の余地など一片もないはずなのに、最後はちょっと物悲しくなってしまうから不思議です。
ラストのベイビーの口が“Mother Fucker!”と動くシーンのジオラマ・フィギュア、どこか作ってくれないでしょうか。
★ご参考