『仮にこれを大戸島の伝説に従ってゴジラ、ゴジラと呼称します』
怪獣映画で絶対に外せないのが、命名シーン。
“名乗り”はドラマの最重要シークエンスのひとつですが、悲しいかな怪獣は名乗る事ができません。
それを代行するのが命名です。
『防衛庁長官より通達。以後、海のフランケンシュタインをガイラ、山のフランケンシュタインをサンダと呼称する』
この瞬間、ただの怪物がキャラクターに昇華され、物語が走り出すのです。
「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」
(1966年/本多猪四郎監督)
冒頭の嵐の海、漁船を襲う大蛸、これを撃退する人型の怪物(ガイラ)。助けてくれたのかと思いきや、力任せに船を沈め、逃げる船員を全力クロールで追いかけ捕食・・。
ギリシャ神話もアステカ神話も裸足で逃げ出す神々しくも禍々しい悪夢。
ガイラの怖さは動きの早さ。ノッシノッシと歩く恐竜系怪獣と違い、二足歩行で全力疾走する様は“お姉ちゃん踊り喰い”シーンとセットで子供心にトラウマ必至。
人間様も喰われるだけじゃありません。
東宝特撮史上、屈指の人気とデザイン性を誇る「メーサー殺獣光線車」の登場です(拍手!)。
木々を遮蔽物にしながら逃げるガイラを追って放たれるメーサー光線が手前の木々を小気味よく薙ぎ払うシーンの素晴らしさと言ったら。
伊福部昭先生の名曲と相まって東宝特撮の五指に入る名シーンではないかと思います。