デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

市長、あんたって人は・・。 超強台風

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「皆私の大切な家族だ!」
「我々は命ひとつとてゆるがせにしない!」
「人を守ってこその法律だ!」

特撮の80%を占めるミニチュア・ワークは“これは絶対海にシーゴラスとシーモンスがいるに違いない”と思わせる素晴らしい出来栄え。

まずはその心意気をしっかと受け止めましょう。

しかし、本作の中心は市長。

間欠泉のような波しぶきをバックに現れ、爆発するタンクローリーを背に走り、強権を発動し、軍隊を動かし、必要とあらば法律も破る、あらゆる局面に於いてToo Muchな対応をする熱過ぎる男、市長その人です。

「超強台風」(2008年/フォン・シャオニン監督)

予測不能な蛇行を繰り返しながら勢力を増し、遂に中国本土に上陸したスーパー・タイフーンに身体を張って立ち向かう市長と彼に助けられる市井の人々の物語。

まず確認しておかなければならないのは、中国の市長と日本の市長は全然違うということ。

日本のように選挙で選ばれた民衆の代表ではなく、中国共産党という“中央”に指名されたアルティメット公務員です。

つまり市長=国家の代弁者。仮に日本で(誰も観ないと思いますが)石原慎太郎が命がけで帝都を守る映画を作ったとしても意味合いは全く違うということです。

これを直球のプロパガンダ(「意思の勝利」系)と見るか、プロパガンダに擬態したブラック・コメディ(「スターシップ・トゥルーパーズ」系)と見るかで評価は分かれると思いますが、とりあえず“男泣きの馬鹿映画”として観るのが健全かなと思います。

結構ベタなツボを突いてくるのよ。うわ、くだらねー、ありえねー、嘘つきー、あ、いい話かも・・みたいな。

笑ったのは、陸に乗り上げた船舶が突き破った避難所の壁から波と共にサメが飛び込んで来た時の市長の台詞。

「私は特殊部隊にいた事がある!」

嘘ぉ!(←声に出して言った)

上着を脱ぎ捨てた市長は棒切れ持って力任せにサメ撲殺漁。特殊部隊関係ねーじゃん。

騎兵隊の如く颯爽と現れるものの活躍シーンが一切無い人民解放軍とか上げてんのか下げてんのか・・。

この市長に相当する役職は日本にはないですが、強いて言えば内閣総理大臣かもしれません。

管直人が身体を張って竹島尖閣諸島を守り、日の丸を振りかざして君が代絶唱しながら韓国・中国の爆撃喰らって四散する映画でもあれば見てみたいですね。監督は三池で。