「オンバドロシュッタウン!」
「オンキリキリバザラウンタッタ!」
「オンシロダビジャエイソワカ!」
呪文と言えば、七年殺しの掛け声にも使われた密教の九字“臨兵闘者皆陣列在前”とか、レインボーマンの変身で有名な般若心経の一説“阿耨多羅三藐三菩提”くらいしか知らなかったので、本作のムドラーが(当時は)実に新鮮でした。
と、まあ、呪文に着目するくらいしか褒め所が無い困った奴なのですが、何故か嫌いになれないんですねえ。
林海象の脚本はグダグダの極み。
将門の血を引く辰宮兄妹、安倍清明の末裔にして“中央に纏ろわなかった者の怨みの結晶”加藤保憲、代々天皇家を霊的に守護してきた土御門家の総帥・平井、そして幸田露伴とその友人である軍医・森鴎外が、どこで出会い、なぜ戦うのかといった基本的描写を呆れるほど綺麗に割愛。
もういきなり「加藤が来たぞー!」ですからね。
観客は原作による脳内補完を余儀なくされる訳ですが、微妙に設定変えているもんだから、それもままなりません。
本来、加藤は劇中ちらっとだけ出てきた軍人・工藤(峰岸徹)の役回り。渋沢栄一の“帝都改造計画”のメンバーとして登場し、ここで大蔵省の役人である辰宮洋一郎(石田純一)や平井(平幹二朗)と接触するのですが、そんな因果関係知ったことかとばかりに加藤は平井の結界を破って辰宮由香里を拉致しちゃいます。
ま、そんな訳でテンポはもの凄~く早いです。サクサク倍速で進みます。
堤康二が札ビラ切りまくって集めた名優陣(必ずしも名演をしているわけではない)も無駄に豪華で目の保養。
人型ロボット学天則の産みの親である元北海道帝国大学教授・西村真琴役を実の息子である西村晃に振るなんざ粋な計らいじゃありませんか。
個人的イチオシは原田美枝子様。実に凛とした威厳ある佇まいで、将門を奉る宮司の娘を演じておりました。キメ台詞は「オンシロダビジャエイソワカ!」
(今日の写真は映画と関係なく原田美枝子一色にしちゃいました)
原口智生のショボイメイクもご愛嬌(あ、絵コンテきってるの樋口真嗣だ)。
実相寺の「ま、こんな画が撮れりゃいいか」なその場その場の満足感を数珠繋ぎにしたような俺様演出も最早味わい。
味わいという点では続く帝都大戦も“嫌いになれない奴”なのですが、戦いの構図が超能力バトルになってしまい、呪文が出てこなくなってしまったのが唯一の不満です。
★ご参考