アラスカの雪原をブレーキ焼き切ってフル・スロットルで爆走する鉄(くろがね)の4重連。
もし、黒澤明が撮っていたら・・というのは事情を知る者の見果てぬ夢ですが、私はこれで良かったと思います。
「暴走機関車」
(1985年/アンドレイ・コンチャロフスキー監督)
刑務所を脱走したマニー(ジョン・ボイト)とバック(エリック・ロバーツ)が飛び乗った機関車は発車直後に機関士が心臓発作で倒れ、無人で爆走する暴走機関車に!
確かに、黒澤の手を離れて加筆・修正された脚本の出来は良くありません。
マニーとランケン所長(ジョン・P・ライアン)の確執は描きこみ不足だし、マニーのキャラも微妙。
そもそもランケン所長がそんなに悪人に見えないので、お互い命を張ってまで対立する構図が理解できません。
暴走する機関車を衝突させないようにあの手この手を考える管制室のやりとりも、もちっとサスペンスフルに盛り上げる事は出来ただろうにとは思います。
ただ、絵柄。支線に避けきれなかった貨車の最後部を景気良く弾き飛ばして、その残骸を先頭に貼り付けたまま、豪雪を死化粧のように纏い咆哮する悪魔の如き顔立ちの絵柄。
これだけで、わたし的には十分合格です。
マニーが屋根によじ登って仁王立ち、吹雪の中に消えていく詩的な終わり方も好印象。
黒澤が撮ったら、要所要所にユーモアを散りばめたバランスの良い作品に仕上がっていたでしょう(←このバランスの良さが苦手だったりする)。
おっと、エリック・ロバーツのボクシング・コーチ役でダニー・トレホが・・(じゃ明日は・・)。