前作「サブウェイ123 激突!」は、チカチカした映像とチャカチャカした編集が全部裏目に出て、原典(サブウェイ・パニック)に対して不誠実の極みでしたが、今回はいい方に転びました。
やれば出来るじゃないか、トニー。
「アンストッパブル」(2010年/トニー・スコット監督)
全長800メートル、39両の大型貨物列車777号が無人で暴走。
手動ブレーキで停止する惰行(コースター)のはずが、ギアは力行に入り、あれよあれよと言う間に100キロ超え。
自動停止用のエア・ブレーキはパイプが外れて役立たず。
おまけに積荷は大量の有毒物質とディーゼル燃料。田園地帯を抜ければ人口70万都市が待っている。最悪の波状攻撃。
777の同一本線上には旧式機関車1206号が。乗務員はベテラン機関士フランク(デンゼル・ワシントン)と乗務経験4ヶ月の新米ウィル(クリス・パイン)。
確かに予定調和。控えめとは言え、目まぐるしいトニー節は満開。しかし、魅せます。
列車パニックはまず主役である機関車の威圧感・禍々しさを出せるかが勝負ですが、冒頭映し出された777の面構えはまるでオカルト列車。合格です。
さらに立体構成の上手さ。
空撮をベースにカメラが走る・回る・上がる・下がる(これがなくちゃトニーじゃない)。その際、必ず列車に併走するヘリを写し込む事によって、前景・後景の立体感を表現。
もうひとつ、停止作戦をデンゼル&クリスに丸投げせず、様々な試みがなされ(現実の事故対処なら当然)、それを繋ぐ司令室、現場、1206号、見守る家族という場面としての立体構成もお上手。
特に最後に場面をさらう溶接工ネッド(リュー・テンプル←「デビルズ・リジェクト」で顔の皮剥がされたバンジョー弾き)は、ミレニアム・ファルコンで駆けつけたハン・ソロばりの儲け役。
とってつけたような家族問題を適当に流してアクションに専念したバランス感覚(まさかトニー・スコットに人間ドラマ期待している人はいないよね)。
車輌の上でガッツ・ポーズをとるデンゼルは、ジョン・ボイトへのオマージュか。
※参考:「世界の車窓から。カサンドラ・クロス」→2008年7月7日
「世界の車窓から国内編。 皇帝のいない八月」
→2008年7月8日
「新幹線大爆破」→2009年1月9日/2010年8月10日
「途中で拳銃変わってね? サブウェイ123 激突」
→2010年9月25日
「咆哮する鋼の4重連。 暴走機関車」→2011年4月10日