走る列車の屋根の上での格闘、滑り落ちそうになるハンギング。
ありきたりなアクションも生身である事とカメラワークの妙によって観客に「おお!(危なかったなぁ。ヒヤヒヤ)」と言わせる説得力を持ちます。
映画における言語とは肉体なんだなぁ、と改めて実感いたしました。
「カナディアン・エクスプレス」
(1990年/ピーター・ハイアムズ監督)
リチャード・フライシャー監督によるオリジナル「その女を殺せ」は未見。
ロスのホテルの一室で殺人現場を目撃してしまったキャロル(アン・アーチャー)。
翌日のニュースで犯人が暗黒街の大親分と知った彼女は子供を別れた夫に託し、自らは兄の所有であるカナダ山中のロッジへトンズラ。
現場に残された指紋からキャロルを割り出した判事補ロバート(ジーン・ハックマン)は目撃者を確保すべくカナダへ。
しかし、暗黒街の大親分は当然の如く司法とも繋がっていたのであった。
ヘリからの機関砲で急襲される山荘。4WDで山道を駆け下る地対空チェイスにハイアムズのカメラ(撮影兼任)が冴える冴える。
かろうじて眼下を走る特急列車に飛び込んだものの、暗殺者も車内のどこかに。
唯一の利点は、キャロルの面が割れていない事。四面楚歌の中ひた走るカナディアン・エクスプレス。終着駅はバンクーバー。
列車内になってしまうと、カメラの動きにも制限があり、「カプリコン1」の複葉機チェイスのようなダイナミックな移動撮影は望めませんが、それでもハイアムズならではのカメラワークはそこかしこに。
サスペンスとしての盛り上がりよりもアクションに重きを置いた演出に潔さを感じます。
ハイアムズとトニー・スコット、リチャード・ドナーの3人には“職人監督マイスター”みたいな称号を与えたいですね。
※参考:「世界の車窓から。 カサンドラ・クロス」
→2008年7月7日
「世界の車窓から国内編。 皇帝のいない八月」
→2008年7月8日
「世界の車窓から[豪華絢爛版]。オリエント急行殺人事件」
→2010年2月12日