イタリアのインフィニティスタチューという所が三船敏郎の1/6スタチューを発表しました。
特に「この映画のこのシーン」という訳ではなく、三船敏郎からイメージするサムライの姿を立体化したもの(見た目の印象は「用心棒」)。
全高32cm、税込56,100円で2021年12月発売予定。
三船映画の名シーンは数多いですが、何故か私の中では三船イコール切腹という図式が成り立っておりまして…。
唐突極まりないですが、三船フィギュアに触発されて「心に残る切腹シーン選手権」を。
先陣はやはり三船に切ってもらいましょう。
「日本のいちばん長い日」(1967年/岡本喜八監督)より陸軍大臣・阿南惟幾(三船敏郎)の切腹シーン。
ポツダム宣言受諾の玉音放送原稿にカタがつき、全ての仕事を終えた夜、自宅廊下で部下に見守られながら。
『せ、せめて介添えを!』『無用だ…あっちへ行け』
腹、そして首。全てひとりで。
観ているだけで腹筋が鍛えられそうです。
この「日本のいちばん長い日」冒頭で、
『もうあと二千万、日本人の男子の半分を特攻に出す覚悟で戦えば、必ず、必ず勝てます!』とか寝とぼけた事言っていたのが神風特別攻撃隊産みの親、大西瀧治郎ですが、彼には彼なりの信念と矜持があったという事を鶴田浩二と東映オールスターズで描いたのが、
「あゝ決戦航空隊」(1974年/山下耕作監督)
締めは勿論大西の切腹。看取ったのは児玉誉士夫(小林旭)。
敢えてドドメは刺さず、長時間苦しむように仕向けた痛すぎる切腹でした。
いや真に「痛すぎる」の称号を受けるべきは、
「切腹」(1962年/小林正樹監督)の千々岩求女(石浜朗)でしょう。
道具が竹光ですよ! 竹光で切腹!? 出来るのか、そんな事!? できるわけがありません。全体重を掛けても死ねず、最後は舌噛み切って。
何故、そんな事になったのか。知りたい人は本編を見ましょう。時代劇の頂がそこにあります。
切腹で連想する人と言えば三島由紀夫。彼が本番前年に出演し予行演習を敢行したのが、
「人斬り」(1969年/五社英雄監督)
三島が演じたのは薩摩藩士・田中新兵衛。“人斬り以蔵”と並び称された“人斬り新兵衛”です。新兵衛は姉小路公知暗殺の疑い(劇中では武市の謀略で殺ったのは以蔵)で尋問中に割腹。
そして翌年…。
多くの役者が三島を演じていますが、今回はいい感じの年齢時に熱演した緒形拳(三島没年時45歳、緒形拳出演時48歳)推しで。
「MISHIMA」(1985年/ポール・シュレイダー監督)
Vシネからも1本。
「実録 新選組[完結編]」(2006年/辻裕之監督)から山南敬助(中野英雄)の切腹シーン。
一度は脱走したものの、自ら戻って局中法度に則り切腹。
諦観極めた一言「新選組万歳」は泣けます。
エンタメからはこれを。
「帝都物語」(1988年/実相寺昭雄監督)より平井保昌(平幹二郎)の切腹占い。
代々天皇家を霊的に守護してきた土御門家の総帥・平井が一命を懸けて問うた≪帝都破壊の日≫。
『我、明治大帝のおそばに逝かん』
締めは再び三船敏郎。腹を切るのは武士だけではありません。
『千利休切腹、山上宗二切腹。古田織部も切腹した。これといった茶の湯者になるには皆、切腹しなければならんのか』
「千利休・本覺坊遺文」 (1989年/熊井啓監督)
もう切腹がテーマになっているとしか思えません。
死の密約、その輪に入れなかった男、織田有楽斎(萬屋錦之介)の慟哭。
利休(三船敏郎)の切腹シーンは「日本のいちばん長い日」と違い幻想的な美しさを湛えておりました。
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※MISHIMAはレビューしていないので代わりにこちらを。