張っている。漲っている。滾っている。
空気が。想いが。怒りが。
武家屋敷中庭での語りと回想という静的構成にも関わらず、何と言う豊かな奥行き。
135分の長丁場を一瞬もダレずに画面に喰い入らせる脚本の妙(橋本忍!)。
言い淀んだら負けとばかりに吟遊詩人の如く喋り倒す役者陣。
叩きつけるようにかき鳴らされる琵琶の随伴(武満徹!)。
時代劇のひとつの頂点がここにあります。
彦根藩井伊家の上屋敷。津雲半四郎と名乗る浪人(仲代達矢)が現れ「切腹のため」お庭拝借を申し出た。
「またか‥」家老の斎藤勘解由(三国連太郎)は苦々しく呟いた。
切腹する気なぞ無いのはわかっているが、本当にやられて庭先玄関先を汚されてはかなわない、という相手の足元を見て金品をせびる・・切る切る詐欺だ。つい、先日も・・。
勘解由は半四郎を屋敷に上げ、先般当屋敷に来た千々岩求女なる浪人の話を始めた。
求女(石浜朗)をたかりと見抜いた勘解由は、望み通りにしてやると中庭を提供し、更に求女の脇差(竹光!)で半ば強引に腹を切らせた。古式に則り、腹十文字に掻っ切るまでは介錯も許さず。
求女は全体重を柄にかけ、あまりの苦しみに舌を噛んで果てたという。
『お前もそうならぬうちに黙って帰れ』
しかし、半四郎は動じない。
『心配御無用、見事、腹掻っ捌いてご覧にいれます』
この求女こそ半四郎の・・。果たして半四郎の目的は・・。
中盤からは、まるで法廷劇のようなサスペンス。隠された事実がひとつ、またひとつと。
名シーンの誉れ高い仲代vs.丹波の決闘シーンは、何か腰が引けてて、時代劇の殺陣っぽくないなぁと思っていたのですが、真剣使っていたと知って納得。
因みに今、三池崇史監督がカンヌに持参している新作「一命」は本作のリメイク。
主演がエビゾー&瑛太ってだけで大笑いですが、本当の地雷は、
脚本:山岸きくみ(終了!)
「えっとー、ざとーいちって眼ぇ見えない人でしたっけ? え、たて?何ですかたてって?」
という程度の頭で「座頭市THE LAST」の脚本書いた(としか思えない)女が、蟻の這い出る隙間もない橋本脚本をリテイク?
馬鹿にすんのも大概にしとけよ。竹光で腹を切るか喉を突け。
※ご参考
仲代も頼むから仕事選んでくれよ…。