池波正太郎原作で闇稼業の時代劇、と言われるとどうしても必殺仕掛人を連想してしまいますが、似て非なる地味暗渋枯殺戮絵巻。
「闇の狩人」(1979年/五社英雄監督)
江戸に暗躍する殺し屋稼業の元締め・五名の清右衛門(仲代達矢)と記憶を失った侍・谷川弥太郎(原田芳雄)、そして彼らと関わる女たち。
前年の「雲霧仁左衛門」とイメージが被りますが、雲霧にあった浪花節がここでは一切見られません。
華麗さ無し、鮮やかさ無し、タメもケレンもかなぐり捨てた善くも悪しくもリアリズムに徹した作り(←話の筋が通っているという意味ではない)。
なんせ得物が長ドス、短刀、出刃、鋏・・殺伐の極みです(笑)。
全体的にややメリハリに欠け冗長な印象を残しますが、原田芳雄(←事実上の主役。仲代はともかく、悪役の千葉真一は完全に割り喰ってます)の大活躍で全部チャラ。
土砂降りの中、大人数が潜む屋敷に単身カチコミ。長ドス振り回すだけの天井高が無いと知るや短刀にチェンジして障子蹴破りながら一気に突入。
振り上げた刀が天井に刺さり動きの止まった相手を腕ごと切断!
外は豪雨、中は血の雨。原田芳雄大殺陣。ラストの仲代VS千葉の一騎打ちが完全に蛇足に見えてしまう迫力です。
残念だったのは女優陣。
岸恵子、松尾嘉代、いしだあゆみ・・お色気から遠ざかること幾星霜。特に岸恵子の肉体を武器にしたファム・ファタール設定は無理あり過ぎ。しかも吹き替えで巨乳って…。
せめて物語にもう少しカタルシスがあれば、必殺の陰画紙的佳作になったと思うのですが…。
※写真の原田はVHSジャケット裏のものですが、裏焼きしてますね(原田の傷ついた目は左目)。
※参考:「志麻、乳出さずも丹波大満足。雲霧仁左衛門」→2010年11月13日