
団鬼六先生がお亡くなりになりました。
5月6日。食道癌。79歳。
鬼六先生と言えば情念の緊縛。にっかつで制作されたロマンポルノの数々は学生時代大変お世話になりました。
本来なら、谷ナオミ、麻吹淳子、倉吉朝子、高倉美貴といった女優に絡めたお話をすべきところですが、今回は、これら作品のほとんどを観賞した横浜にっかつにちなんでこれを。
「ヨコハマ・メリー」(2005年/中村高寛監督)
横浜と関わった事がある人なら(見た事はなくとも)一度は耳にしたことがあるであろうメリーさん。
白塗りの顔で街角に立ち続ける老婆。戦後50年を娼婦として生き、ある日忽然と姿を消したハマの伝説。
中島らもの「白いメリーさん」の元ネタにもなった都市伝説を追いながら、戦後横浜の歴史を辿ったドキュメンタリーです。
鬼六先生はメリーさんの思い出を語る生き証人として出演しています。
正直、映画は作者の良心(やさしさ)が勝ちすぎて、ドキュメンタリーとしてはどうよ?な感じなのですが、若い頃の大島渚あたりが撮ったら、観ているこっちが“分かったからもう止めてくれ”と根をあげそうな“剝き出し”の作品になったでしょうから、これはこれでいいのかもしれません。
本人不在の横浜で噂の後追いに終始するものと思っていたら、ラストで唐突に本人が登場し、伝説を実体化させたのは驚きでした(「生きていたのか!?」)。
故郷の老人ホームで穏やかな笑顔を浮かべる、かつてメリーさんと呼ばれた老女を見た時は不覚にも涙腺が緩みました。
しかも、恐らくこの直後(2005年1月7日)に他界。正に奇跡のタイミング。
鬼六先生は当時、メリーさんにつきまとわれて困ったそうです(笑)。
向こうでもつきまとわれないようお気をつけください。
ご冥福をお祈り申し上げます。