底の浅さと中身の薄さを悟られない為の思わせぶり。
“分かる人だけ分かればいい”という甘美な逃げ口上。
出られない空間=何ぴとも入れない空間。
四方を囲む白い壁は、ピンク・フロイドの「ザ・ウォール」か、はたまたA.T.フィールドか。
「しんぼる」(2009年/松本人志監督)
世界とは、神の気まぐれと偶然が外界に拡大投影されたもの、という発想自体は別に新しいものではありません。
ただ、もし同じ脚本をダンカン主演でたけしが撮っていたらどう評価されたでしょう?
“ホドロフスキーがキューブを撮ったら、こんな感じ”くらいの事言う奴は出てきたかもしれません。
ギャグは一部を除いてダダ滑りだし、けなせる所は、壁の“しんぼる”の数より多いかもしれませんが、偉大なる裸の王様の壮大なる失敗作として記憶に留める価値はあると思います。
本当に「クズ」と呼ぶべき邦画、唾棄すべき邦画は他に掃いて捨てる程あります。
もし、2時間ヒマを潰さねばならない時に、「座頭市THE LAST」と「もしドラ」と「女神のなんちゃら」と「踊るなんちゃら」と「恋空」と本作どれ観る?と言われたら迷わず本作を選ぶでしょう(ただ2回は観ない)。
にしても、そんなに神になりたかったのか、松本人志? いや、既に「俺は神だ!」という自己主張なのか?(キリストと言うよりはスリムな松本智津夫だが・・)
あ、あと、本筋とは全く関係ないですが、KISSは舐めたらいかんよ。