デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

与え奪い滅ぼす力。 クロニクル

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ひょんな事から手に入れたテレキネシスという“力”。

過ぎた力は与えもしますが奪いもします。時には滅ぼすことも。

「クロニクル」(2012年/ジョシュ・トランク監督)

学校では苛められ、家ではアル中の父の暴力に晒され、母は病気で寝たきりというロイヤルストレートフラッシュな不幸に喘ぐ孤独な高校生アンドリュー。

彼といとこのマットとその友人スティーブの3人は謎の地下壕を探検したのをきっかけに思念だけで物を動かすことの出来る力を手にします。

最初のうちは他愛の無いイタズラに使う「超能力学園Z」な展開でしたが、車のような大質量のものを動かし、自らを操って空を飛ぶ事が出来るようになると…。

特にアンドリューは、その置かれた状況、カッとなりやすい性格から力の制御が効かなくなり…。

本作はアンドリューの中古ビデオカメラの画像を中心にした所謂POV(最近はファウンド・フッテージ・スタイルと言うそうな)。

常にカメラマンポジションの人間か固定カメラが存在していなければならないのがPOVの足枷でしたが、今回はある裏技(?)でこれを回避。POVでありながら、映画的な“神の視点”を持つことに成功しています。

アンドリューの精神の歯車が狂いだす後半は能力覚醒が一気にエスカレート。

「AKIRA」か「キャリー」か「フューリー」か(はたまた「デビルスピーク」か)な展開に。

大抵の場合、超能力バトルは空間が限定(体育館とか屋敷とか講堂とか)されますが、本作は市街地のド真ん中で潔いにも程がある弾けっぷりを魅せてくれます。

POVとしては「クローバー・フィールド」と肩を並べる出来ではないかと。

「AKIRA」のハリウッド実写化プロジェクトがその後どうなったのかは知りませんが、もしまだ活きているとしたら、そのハードルは一層高くなったと言えるでしょう(ってかいい加減諦めてくれよ…)。