殺られる前に死のう! 乾杯!
教祖・ジム・ジョーンズの音頭でシアン・カクテル一気飲み、赤ん坊には注射針、逃げる奴らは後ろから蜂の巣。
築いた屍、合計914体。9.11に王座を奪われるまではアメリカ史上最悪の犠牲者数を誇った集団自殺(正確には無理心中)、ガイアナ人民寺院事件(1978)。
その顛末を見世物小屋的軽薄さで描ききった傑作(?)が「ガイアナ人民寺院の悲劇」。
そして、この話を現代に置き換えてファウンド・フッテージ方式で撮影したのが、
「サクラメント 死の楽園」
(2013年/タイ・ウェスト監督)
過激な取材スタイルを売りにするニュースメディア、VICE社の取材クルー、サムとジェイクが、とある共同体に潜入取材。
ジャングルを切り開いて作ったコミューン「エデン教区」。ここで暮らす人々は皆笑顔を浮かべ、精神の充足を唱え、指導者である“ファーザー”を称えていましたが…。
題材が題材だけに、狂気の楽園ぶり(教義に反した者がどのようなメに遭うのか)に期待が高まりますが、そういうエログロ描写は一切無し。
作り手にジム・ジョーンズの半生をトレスするつもりはないようです。
本来であれば、ジム・ジョーンズが何故アメリカを離れ、ガイアナの奥地に人民寺院を築き、狂気に翻弄された挙句、自滅していったか、を語って欲しいところでしたが、あくまで得体の知れない空間に放り込まれた人間が、この世のものとも思えない惨劇を“目撃”するという体験性に重きを置いているようです。
熱狂的に迎えられるトリックスター“ファーザー”。右は本物のジム・ジョーンズ。
ジム・ジョーンズの精神面に踏み込まない事と、マイナーなTV局の取材と言う事件性の低さが集団自殺に至る経緯を弱くしてしまったのは残念。
実際には視察に来たレオ・ライアン下院議員と関係者を皆殺しにしてしまったという「最早これまで」な事件があったので、まあ(集団自殺は)仕方なくはないと言えなくもなかったですが、メディアの取材を受けた→(風が吹けば桶屋が儲かる的展開)→皆殺しにされる、という被害妄想的思考ではちょっと納得がいきません。
とは言え、やはり集団自殺は圧巻。
個人的にはエド・ゲイン、チャールズ・マンソン、ジム・ジョーンズ絡みのネタには無条件に反応してしまいますね。