何を今更、なPOV。「家族のドキュメント映画を撮る」というお姉ちゃんの素人撮影につき合わされると分かった時はちょっと凹みましたが、そこはシャマラン。“ヒネリの無い意外性”という得意技を駆使して“癒しと赦しのドラマ”に仕上げています。
「ヴィジット」
(2015年/M・ナイト・シャマラン監督)
両親と大喧嘩の末、愛する人と駆け落ちした母。二人の子供をもうけたにもかかわらず、家族を捨てて別の女の元に走った父。
父を許せない娘ベッカ15歳と、父が家族を捨てたのは自分のせいだと思っている息子タイラー13歳。
15年間音信不通だった母の両親(つまり祖父母)から「孫と1週間過ごしたい」という申し出があり、ベッカとタイラーは母の故郷ペンシルバニアへ。
優しい祖父と料理上手な祖母。田舎暮らしを堪能する二人でしたが…。
祖父も祖母もどこかおかしい…。
ファウンド・フッテージ・ホラーは撮影者視点になるため、撮影者が知りえない事は情報として提示されない(偶然写ったものから類推するしかない)と言う楽しみがある反面、描写が冗長で本題に行き着くまでが長いという欠点があります。
本作も話が波に乗る(祖父母の奇行を目撃する)までが少々苦行。
また、比較的容易にオチが読めてしまうのでホラーとしては面白みに欠ける仕上がりになっています(逆にシャマランだから、実は爺さん婆さんは宇宙人なんじゃないかとかいらん詮索を巡らせてしまうという弊害も)。
ここは、両親を捨てた事を負い目として苦しんでいる母、家族を捨てた父を許せない姉、父の期待に応えられなかったと思い込んでいる弟の心の傷を癒すヒーリング・ホラーとして観るのが正解。
頑なに両親の事に口を閉ざす母、父が出て行ってから鏡を見ることができなくなってしまった姉、潔癖症になってしまった弟。三者のトラウマ克服ホラーでもあります。
通常ホラーとしてもあちこち伏線張っていますし、ビビらせるところはきちんとビビらせてくれるので、そんなに貶される作品ではないと思います。