ウィリアム・バロウズがラリパッパ状態で書きなぐった断片を繋ぎ合わせた実験小説をカナダの変態が映像化。
もともと意味も脈絡もない中毒患者の幻覚をベースにしているのですから、起承転結なんかある訳がありません。
勿論、隠喩も暗喩もありません(多分、いや絶対)。
「裸のランチ」
(1991年/デビッド・クローネンバーグ監督)
ウィリアム・リー(ピーター・ウェラー)は小説家ですが、今はしがない害虫駆除業者。
ある日、配給制の駆除薬が足りなくなり、不審に思って家に帰ると妻ジョーン(ジュディ・デイビス)が除虫菊の粉末でラリパッパ。
『あなたも試してみる?』
『いや、俺は、そんな・・おおう!』
巨大なゴキブリがケツの穴を開いて喋る。
『俺はお前の上司だ。女房はスパイだから殺せ。但し粋な方法でな』
ウィリアムは、ウィリアム・テルごっこで妻を射殺(実際、バロウズもこの方法で妻を射殺しています)。
タイプライターはゴキブリに変態し、「スパイ組織を突き止めるためインターゾーンへ行け」と意味不明な指示連発。
そしてウィリアムはインターゾーン(どこだよ?)へ。
「ビデオドローム」にしろ「イグジステンズ」にしろ、幻覚(虚構)と現実の線引きは(曖昧ながらも)されていました。登場人物にも「これは現実なのか、まだ夢の中なのか」という葛藤がありました。
ところが、本作の主人公は葛藤無し。あるがまま。どっぷりずっぽりラーリラリ。
なので、全編、ひたすら倦怠感漂いまくりの幻覚幻想。駄目な人は爆睡必至。
インターゾーンは、バロウズの移住先であるモロッコのタンジール辺りをイメージしているように見えます。
なので正しい原作は、“バロウズin裸のランチ”なのかもしれません。
批判は当然ですが、やっぱりこの人のヌメヌメとした(所謂内臓感覚)映像は好きだなあ。
所でロイ・シャイダー、君こんな所で何してんの?
※参考:「ビデオドローム」→2008年3月9日/2011年2月19日
「イグジステンズ」→2008年7月18日