『お前の言う地球は青くて丸くてツルツルした星の事だろ。俺のは違う。俺の地球はゴツゴツしたただの岩だ!』
気がつけば、後戻り不能な一方通行出口無し。主人公だけでなく、観ているこちらも。
「冷たい熱帯魚」(2010年/園子温監督)
妻と死別後再婚したが、後妻と娘の折り合いが悪く、現実から目を背けっぱなしの熱帯魚店店主・社本(吹越満)。
娘の万引き事件を丸く収めてくれたのみならず、住み込み従業員として預かると言ってくれた大型熱帯魚店アマゾン店主・村田(でんでん)。
村田は社本に希少種魚の養殖ビジネスを持ちかけますが・・。
モチーフは1993年の埼玉県愛犬家連続殺人事件。状況や設定は変えていますが、オチ以外は事実のパッチワークになっています。
だからと言ってこれが“実録もの”で「復讐するは我にあり」と同じ箱に入るかと言うと全くの別ジャンル(だから細部にリアルを求めるのはお門違い)。
強いて分ければ、“暗黒コメディ(というジャンルがあるのかどうかは知りませんが)”。
でんでんは気持ち良かったでしょうね。ノリノリ。
彼の脅し、賺(すか)し、追い込み落とす話術はカルト教団のそれそのもの。
彼に魅入られ(要因を内在していたとは言え)崩壊していく家族という図式は、前作「愛のむきだし」と共通しており、両作は地続き(同じ大陸の端と端)の姉妹都市。
始終オドオドしていた事なかれ主義の吹越が覚醒(?)して、○○を××した挙句に娘殴り倒し、娘の彼氏蹴り倒し、妻レイプし、のシーンにこの上ないカタルシスを感じてしまうのは“人としてどうよ?”と思わなくもないですが、これは監督の演出意図でしょう(←自己正当化)。
吹越の妻役の神楽坂恵は肉付きが妙にいやらしくて(顔も含めて)結構好み。
愛犬家連続殺人の犯人は「骨を焼くのにもコツがある」と言っていたそうですが、本作を観る限り、そのコツとは、“焼く直前に醤油をかける”事のようです。
試す機会が無いのが実に残念。
※元の事件について知りたい人はここいらへん参照→http://blog.goo.ne.jp/tagomago1021/e/207e67dcb169fed71ea73060816c7287
★ご参考