デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

気まずい空気をかき混ぜて…。 リアリズムの宿

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顔は知っている。一応名前も。

でも友達じゃない男二人。

この気まずい「間」と言うか「距離感」、あるいは空気の「密度」をすくって並べてかき混ぜて・・。

リアリズムの宿
(2003年/山下敦弘監督)


自主映画の脚本家・坪井(長塚圭史)と監督・木下(山本浩司)は、俳優・船木(山本剛史)と3人で新作映画の打ち合わせを兼ねた旅に出ることに。

しかし、二人を引き合わせるはずの船木は待ち合わせ場所である現地(鳥取)の駅に来なかった(理由:寝坊←集合時間にまだ自宅)。

取りあえず宿を知っているという木下に促されて宿に向かうと、そこは無人(休みと言うよりは倒産)。

「予約とかは?」「してない。そこまで頭回らんかった」

土地勘の無い田舎で彷徨う二人。互いの距離感を測るため手探りでジャブ(時にはうっかりストレート)を繰り出しつつ、間合いを詰めていきますが・・。

つげ義春の「リアリズムの宿」と「会津の釣り宿」を原作にしているとは言え、小ネタを拝借しているだけで、話の骨子はオリジナル。

しかし、全体を包み込む体感温度はとっても“つげ”。

ここに故意か偶然か、降って湧いた女神・敦子(尾野真千子)が加わって青春映画の黄金率(男2+女1)完成。

こういう風情になると「くるり」の音楽は俄然精彩を放ちます(「ジョゼと虎と魚たち」も同年。充実の1年です)。

野外で炊くお風呂(宿主曰く露天風呂)は、「会津の釣り宿」からの引用ですが、できれば露天風呂の来歴(鉄砲水で散髪屋の風呂桶が入浴中の娘ごと流されてきた)も映像化して欲しかったなぁ(無理だよな)。

※参考:「ジョゼと虎とSMキング」→2008年6月27日
    「ジョゼと虎と中国製トカレフの謎に迫る」
     →2009年1月15日