やれ凡作だの話のスケールが小さいのと評価の芳しくない作品ですが、何をおっしゃいますお武家様。
これぞ80年代を代表する歴史の断片、時代の生き証人ではありませんか。
主演はこれ1発でブレイクし、弾け飛んで消えてなくなり、B級の地べたを這い回った挙句、「Lの世界」「ザ・ウォーカー」などで一線に返り咲いたジェニファー・ビールス。
男女混成吹き替え軍団を従えてのダンスシーンは、その誤魔化しのテクニック(シルエット、白塗り、部分アップ)と相まって圧巻。
もう1人の主役とも言うべき音楽担当は、同年「スカーフェイス」、翌年「メトロポリス」「ネバーエンディング・ストーリー」、そして翌々年に「トップガン」をかっ飛ばすミスター80年代、ジョルジオ・モロダー。
アイリーン・キャラの主題歌もナイスですが、マイケル・センベロの「マニアック」が編集の素晴らしさも含めて本作の白眉。
惜しくもサントラには収録されませんでしたが、Joan Jett & The Blackheartsの「I LOVE ROCK’N ROLL」もノリノリ(←死語だな)で最高。
ドリュー・バリモアは、この曲を「チャーリーズ・エンジェル」で自身の紹介シーンに流していましたし、続く「フルスロットル」では溶接工のコスプレ付きで主題歌を挿入していました。
「フル・モンティ」では、ダンスの教材ビデオとして使われ、(主人公たちが溶接工なので)「(ジェニファーの)溶接が下手だ」と突っ込まれていました。
テレビ東京で放送中のアニメ「ジュエルペットサンシャイン」第25話ではほぼ完コピ(最早パロディというレベルではない)。
皆に愛されているじゃないか、「フラッシュダンス」!
お話は確かに安くて小さいですが、身の丈に合ったサクセス・ストーリーなんですよ。
その裏でスケーターの夢破れてトップレス・ダンサーになっちゃった友人や、スタンダップコメディアンになり損なった職場の同僚など挫折のスパイスもしっかり効かせてバランスとれているじゃないですか。
『(彼女は)2年間もこの日の為に練習したのよ』
『次はうまくいくさ』
『次なんてないわ』
よく「フットルース」(1984年)とひと括りにされますが、私は本作の方が好きだなあ。