軽快なドラムをバックにKマーク(にっかつのNじゃなくて日本「活動」写真のKだ)。
いきなり戦火のベトナム(という設定なんだからベトナムだと思って見るように)、迫撃・銃弾雨あられ。
従軍カメラマン、小林旭(役名は本堂大介ですが旭で統一)が、砲火の中を飄々と突っ走ってメインタイトル。
「俺にさわると危ないぜ」
(1966年/長谷部安春監督)
山本直純の景気のいいダンスミュージックに乗って、カトーマスクのような仮面をつけたナイスバディ…とはちょっと違うけど当時としては多分セクシー美女…たちがキレのないダンスを披露。
ああ、これって「Jaan Pehchan Ho」(1965年のインド映画「GUMNAAM」収録曲。「ゴーストワールド」のOPに映像ごと流用)じゃん!
当時、インド映画を観る機会がどの程度あったかは分かりませんが、意識しているとしか思えません。
上「俺にさわるとあぶないぜ」 下「GUMNAAM」
背景は安春(古の作法に則りアンシュンと呼称)が助監督についていた鈴木清順に倣って原色サイケ。
ここに小林旭の裏返った声で『♪アリベデルーチ・レオパルーダ・カリーナ』(意味など分からん!)という素っ頓狂な主題歌が被ってカオス満開。
ご機嫌すぎるにも程がある立ち上がりに即時降伏。
お話は、敗戦のどさくさで行方知れずになった沖縄の金塊を巡る日米マフィア連合と謎の皮ジャン黒タイツの美女軍団(本作の英題は「BLACK TIGHT KILLERS」)の攻防に小林旭が巻き込まれるというもの。
旭は百地流忍法を研究している百地三済(左卜全!)宅に居候しており、得体の知れない暗器を提供されています(007シリーズのQみたいな役割)。
最初、旭と対立していた黒タイツ軍団は、やがて共同戦線を張るのですが、ひとりまたひとりと旭の盾となって命を落としていきます。
最期は必ず旭の腕の中で「あんたはいい人だった」的な一言を残し、旭は悲壮な表情で「いい子だった…」とつぶやくのがお約束。
安春監督は本作がデビュー作。しかし、師匠譲りの10年早いアバンギャルド感が災いして1年以上の長きに渡って現場を干される羽目に。
そして、師匠・鈴木清順は同年に「けんかえれじい」を、翌年に「殺しの烙印」を発表して日活を追われてしまいます。
見事な師弟関係と言えるでしょう。
タイトルにもあるように本日11月3日は小林旭の誕生日(1938)。おめでとうございます!!。
最近はVシネの方もご無沙汰ですが、本年6月16日にはyoutubeで小林旭マイトガイチャンネルを設立したりして益々壮健。
もう一花咲かせてください。
★ご参考①Jaan Pehchan Hoについてはこちらを
★ご参考②「けんかえれじい」についてはこちら
★ご参考③そして問題作「殺しの烙印」はこちら