例えば「世にも奇妙な~」とか、「本当にあった~」とかと同じ土俵のモノサシで測ると“物足りないホラー”になってしまうかもしれません。
所謂、幽霊譚とクトゥルフは別の世界の物語。
この時代に、しかもゴールデンにラヴクラフトがテレビ放送された、その事実が素晴らしいじゃありませんか。
20年前、テレビにはまだ気概というものが残っていました。
ラヴクラフトの同小説を現代日本に置き換えて翻案。
主演は自らもクトゥルフ小説を書くラヴクラフトマニア、佐野史郎。
脚本は後に「ウルトラマンティガ最終三部作」でクトゥルフ・リスペクトを爆発させる小中千昭。
旅行雑誌のカメラマン平田(佐野)は、取材のため寂れた漁村、蔭洲升へ。
最寄り駅は赤牟(アーカム)。因みに前後の駅は壇宇市(ダンウィッチ)と王港(キングスポート)。
この駅の標識は人間椅子のPV「ダンウィッチの怪」で流用されています。
老人だけの集落。平田に懐疑的視線を送る魚のような顔の漁師たち。
町並みに既視感を覚える平田。そして、妖艶な視線を送る不釣合いな美女(真行寺君枝)。
実はクトゥルフと日本の土着信仰って親和性が高いのではないでしょうか。単なる言葉遊びを越えた換骨奪胎感が漲っています。
赤牟出身の宅配便屋で河合美智子が。この頃の河合って“ダイエットに失敗した原田知世”な雰囲気があって、ちょっと可愛かったりします。
蔭洲升郷土資料館館長に石橋蓮司。資料の中にしっかり「ネクロノミコン」が。
是非、スチュアート・ゴードン監督の「DAGON」と2本立てでご観賞ください。