PHP研究所のラヴクラフト・コミカライズ・シリーズの第1弾。
題材に「クトゥルフの呼び声」を選んだのは正解ですが、新人のデビュー作にあてがうには無謀すぎる選択だったのでは?
「邪神伝説 クトゥルフの呼び声」(2009年12月11日初版発行/PHP研究所刊/宮崎陽介画)
実は私は読んだ順番が逆で、既に宮崎氏による「ダンウィッチの怪」「ダゴン」「狂気の山脈」「ニャルラトホテプ」を読んでいたので、なんとなく氏の画風に馴れてはいたのですが、それにしても酷い(笑)。
回を追うに従って画力はアップしていると思うのですが、このデビュー作はフォローのしようがありません。同人誌レベル以下。
1926年、大叔父の遺品の中から不気味な粘土板と新聞の切り抜き、そして「クトゥルフ教について」と題されたノートを発見した主人公が踏み込んだ出口無き迷宮。
シリアスな展開にも関わらずタッチがマヌケなので全然怖くありません。
どう見ても時代考証してないだろ? な服飾雑貨文化ファッション。
登場人物はアップ多用。背景真っ白(せめてスクリーン・トーン貼れよ)。
ま、それでもお話は原典忠実なので、手っ取り早くストーリーを追いたい人には便利な1冊…って昨日も書きましたね。
小説のコミカライズでいつも思い出すのはこの1冊。
「百億の昼と千億の夜」(光瀬龍原作/萩尾望都画)
あの分かりにくい上に滅茶苦茶な(故に日本SF史上最高峰の1冊と思える)原作をよくぞあそこまで…。
逆に言えば(コミカライズは)萩尾望都クラスの力量があって初めて可能であった、という事です。
いつの日か、第一線の漫画家になった暁には是非、自らの手でリテイクしてください。宮崎さん。