山岳ミステリーからオカルト風味スリラー、そして本格怪獣映画へ。
「巨大目玉の怪獣 トロレンバーグの恐怖」
(1958年/クエンティン・ローレンス監督)
首無し死体で発見される登山者、山の中腹に居座る謎の雲、何かに呼ばれるように引き寄せられた姉妹(妹は霊能者)。
トロレンバーグは架空の田舎町。文章の構造は「ダンウィッチの怪」と同じです。
文字通り作品の目玉となる怪獣ですが、キービジュアルになっているイラストとは全くの別物。
何と言うか、陰嚢に目玉ひとつ貼り付けて触手で飾ったにゅるにゅる系。クトゥルフっぽいと言えなくもありません。
こいつら(1匹じゃない)が隠れ蓑にしているのが、宇宙線を発する雲。
エフェクトの技術力の問題でビジュアル的には霧。これが高度を下げて麓のホテルを襲う様子はまんま「ザ・フォッグ」。
実はカーペンター先生、本作にインスピレーションを受けているそうで、思わぬ元ネタ探訪になりました。
邪悪な存在を感知する霊能者と言うと「ヘルハウス」のパメラ・フランクリン嬢を思い出しますが、本作のジャネット・マンローもいい感じに神経症な顔立ち。
霊能者は演技以前に顔の説得力が大事です。
冷静に考えると、霊能者は何を感じ取ったのか、陰嚢目玉の目的は何だったのか、何故死体は首無しだったのか、全編謎まみれなのですが、伏線も回収も知った事か、な豪腕演出に押し切られてしまいました。
ミニチュア+操演、セット+マット画といったアプローチに頬がゆるむ異形の侵略映画です。