今月はすっかりクトゥルフ特集になってしまいました。
ラヴクラフトの凄い所は、時代も場所も異なる話に共通の小道具を投げ込む事によって、それらが同じ世界観の下で起きているという“広がり”を持たせた事でしょう。
先月末にご紹介した漫画「ダンウィッチの怪」と同じシリーズですが、こちらはクトゥルフの萌芽を内在した初期短編の漫画化です。
「ダゴン」(PHP研究所/原田雅史・他)
収録作は「無名都市」「ダゴン」「魔宴」「神殿」の4作。
「無名都市」は、アラブの狂える詩人、アブドゥル・アルハザードの名前と共に、その詩の一節が紹介された記念すべき作。
“そは永久(とこしえ)に横たわる死者にはあらねど
測り知れざる永劫のもとに死者を超ゆるもの”
地下深く広がる謎の回廊の突き当たりで目にした古代の支配者の姿とは。
「ダゴン」は“深きものども”の上に君臨する海神ダゴン(写真下は想像図)の初登場エピ(昨日ご紹介した「インスマスを覆う影」でもダゴン様として崇拝されていました)。
「魔宴」は月初にご紹介した人形画ニメ「ダニッチ・ホラー」の最後に収録されていた「フェスティバル」と同原作。
人々がクリスマスと呼んでいる日。その日はキングスポートでは人類の歴史より古い記念日“ユールの祝祭”。
クトゥルフ信仰を異教と捉えると共に、アブドゥル・アルハザードによる禁断の魔道書「ネクロノミコン」の現物が登場した記念すべき作品です。
「神殿」はドイツUボート艦長が、狂気の果てに海の底でルルイエと思しき大神殿を発見するお話。
いずれも“いい感じ”の仕上がり。小説はとっつき難いとお考えの方は、ここいら辺から入ってみるのもいいかもしれません。