『初めてウルトラマンをこの目で見た時、神に逢ったと思ったわ。人間を導いてくれる神だと。でも違うのね。ウルトラマンは光であり、人なのね』
宇宙人ではなく“光”。超古代の文明を守りながら、人間の判断には干渉せず滅ぶに任せた傍観者。
人として出来る事をするというダイゴ(長野博)の想いは、天才科学者・マサキケイゴに自覚無き者として面罵されますが、この人間サイズの思考こそ、ティガの持ち味であったと思います。
最終三部作は、過去の登場人物をこれ以上ないくらい効果的に再登場させ、クライマックスに相応しい大団円を演出します。
ある意味「史上最大の侵略(前編・後編)」(ウルトラセブン)と肩を並べるウルトラシリーズの名エピソードではないでしょうか。
しかし、本作の隠れた凄さは、何気にクトゥルフ神話リスペクトを全開させた小中千昭の大暴走脚本にあります。
「ウルトラマンティガ[最終三部作]」
(1997年8月16日・23日・30日放送/原田昌樹・村石宏實監督)
まず人類以前に超古代文明人が存在していた、という設定が隠し味。
最終三部作では、ニュージーランド沖で謎の海底都市が発見されます。
何故、ニュージーランド沖なのか?
そこは海底都市ルルイエが沈んでいると言われている場所。その幾何学建築を無視した神殿の奥底には“偉大なるクトゥルフ”が、眷属らと共に目覚めの時を待っている…。
眷属ゾイガーの覚醒に続いて、海底都市が隆起、現れたのは邪神ガタノゾーア。
ラブクラフト後継者のひとり、ヘイゼル・ヒールドの短編「永劫より」に登場する神、ガタノトーアからの転用です。
何本もの触手を操る邪神のデザインは実にクトゥルフ的。
そして邪神との闘いに敗れたウルトラマンは石像となって海底へ…。
ガタノトーアの姿を見たものは肌が石化し、脳だけが半永久的に行き続けるのだそうです。ダイゴが石化したウルトラマンの中で意識を保っているのはこの設定によるものでしょう(←知ったような書き方していますが、ヘイゼル・ヒールドの小説は未読です。ガタノトーアの設定知識はWikipediaの横流し)。
ウルトラマンにかこつけて、信者魂を炸裂させた小中さんは“思い残す事の無い”仕事をしたのではないかと思います。