夏木勲(撮影時推定39歳)の詰襟!
中尾彬(同37歳)の詰襟!
そして岸田森(同40歳)の詰襟!
てんぷら揚げ放題なコスプレ祭りも今や伝説。
これぞ真のピカレスク・ロマン。
「白昼の死角」(1979年/村川透監督)
東京大空襲から東京裁判。“Death By Hanging”乱れ撃って戦後開幕。
混乱の最中、東大法学部の学生たちが頭脳ひとつで立ち上げた金融会社・太陽クラブ。
社会の衆目を浴びたのも束の間、闇金融容疑で警察の手入れを喰らって信用ガタ落ち。
中心人物・隅田(岸田)は狂気の果てに全身松明の焼身自殺。
残された鶴岡(夏木)らは、企業相手に大掛かりな手形詐欺を連打し、次々と大金を掠め取っていきますが・・。
まずは隅から隅まで出演者が豪華。ほぼ全カットに有名人。オールスター忠臣蔵にオールスター新撰組が合流したかのような賑々しさ。
中でも特捜の会田、じゃない、検察の福永を演じた天知茂と、大友連合会の大友勝利、じゃない裏社会の男・太田洋助を演じた千葉真一が最高(キャラ丸被り)。
気弱な(笑)中尾彬と、文字通り“命がけ”で鶴岡を守る情婦・綾香役の島田陽子も◎。
角川春樹と鬼頭史朗のツーショットとか怪しいにも程があります。
154分という長尺ですが、全く長さを感じません。むしろ景気良く説明不足なシーン(鶴岡の正妻・丘みつこが投身自殺に至る心情的経緯など)をもっとじっくり撮って欲しいくらいです。
本作が素晴らしいのは、きっちりピカレスクとして完結している所。
TV版では、鶴岡役の渡瀬恒彦は病に伏し、“トマトジュース逆流吐血”という身体を張った隠し芸まで披露して悔恨の情を見せますが、夏木鶴岡は反省ゼロ。
罪を認めて保釈されるや、全く関係の無い男を自分にみせかけて丸焼き。悠々海外逃亡。
こういう展開を見せるのは本作と漫画版「堕靡泥の星」くらいじゃないでしょうか。
村川監督は79年だけで本作、「蘇える金狼」「処刑遊戯」、TV「探偵物語」「西部警察」と脂乗りまくり。
優作の影響(もしくは干渉)があったであろう一連の作品を除けば、間違いなく氏の代表作だと思います。