デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

千手観音でも突っ込みきれない。 エアポート2012

イメージ 1突っ込み所もひとつやふたつなら「ちょっと待て。それはおかしいだろ」と冷静な対応ができるのですが、織田鉄砲隊三段撃ちの如く連射されると、「えっと今のは…ん、ま、いいか」というパンチドランカー状態に。

適当かついい加減な設定と展開に立ち眩みにも似た感覚を覚えますが、ここまで徹底されれば文句を言う気にもなりません。

「エアポート2012」(2012年/リズ・アダムズ監督)

航空管制の人為的ミスを撲滅するために開発された全自動危機回避装置ACAT。

この衛星ネットワークシステムが軍用機に続いて民間機に適用された当日、ACATを制御する軌道衛星が次々故障して地表に落下。

全米各地にメテオの如く降り注ぐ軌道衛星。

もうこの時点で飛行機のひとつやふたつ、どうなったっていいじゃねえか、な大惨事。

クリープランドの航空管制センターのボブ(レジナルド・ヴェルジョンソン←ダイハードの黒人巡査)は、「ACATヤバいんでね?」という直感で飛行中の全機に着陸指示。

この管制塔、普通のオフィスみたいな事務所に管制官数人という規模なのですが、ここで一体どれほどのエリアを掌握しているのでしょう。

しかも、ボブはエアフォース・ワンにも離陸許可を出しています。官民同時管理! 凄いぞ、クリープランド。

で、エアフォース・ワンを統括しているACATが暴走(HAL9000状態)。

パイロットが一瞬席を離れた途端、“パイロット不在”と認識して自動操縦に切り替え、乗務員を“テロリスト”と認識してレーザー攻撃(はい?)。

軍用機は敵機と看做してミサイル攻撃。制御不能の空飛ぶ目茶ぶつけ要塞に。

この迷惑千万な大統領専用機の前方には、ACATの破片に被弾し通信不能に陥った民間旅客機が。

同高度に位置するためこのままだと30分後には正面衝突。エアフォース・ワンは迷わず民間機にミサイル発射。

パニックに陥る民間機、ACAT制御の解除を試みるエアフォース・ワン、大統領救出に向かう軍用機、アナログな通信手段で民間機との連絡方法を模索する管制塔、落下し続けるACAT衛星…。

凄い。「エグゼクティブ・デシジョン」が裸足で逃げ出す大盤振る舞い。

航空管制の安全が目的なのに、機内のドアをロックし、指紋認証装置に電流流してパイロットを殺し、乗務員をレーザー攻撃…自我でも目覚めたかACAT?

誘導のための戦闘機は撃墜したくせに大統領救出用のダコタは何故攻撃しない?

ついさっきまで押しても引いても開かなかった操縦室のドアを大統領の娘があっさり(普通に)開けてしまった時はさすがに腰が砕けました。

エンジン停止して“♪真っ逆さまに墜ちてデザイア”な民間旅客機が落下の風圧を利用して風力発電を起動させるというアイデアには唸りました。

緊急時にラム・エアタービンを回転させて最低限の動力確保をする仕組みで、現在の旅客機には標準装備されているそうです。

しょぼいCG、他作品からの流用映像、プラン9に毛が生えた程度のエアフォース・ワン内部と“予算って何?”な仕上がりですが、次々繰り出されるサービス満点な危機また危機にお腹は一杯。

さすがアルバトロス。善くも悪しくも期待に違わぬ買い付けでした。