ヘッドホンのご用意を。 世界でいちばん強くなりたい♯1-2
「痛ぁい!」
新人レスラーの悲鳴は女子プロレスの風物詩みたいなもので、特段誇張をしているわけではないのですが、ここまで喘がれるとちょっとお茶の間で家族揃って…という訳にはいきません。
ヘッドホンのご用意を…。
「世界でいちばん強くなりたい/第1話・アイドルレスラー誕生、第2話・プロデビュー」(2013年10月6日・13日放送/中川聡・松本マサユキ演出)
トップアイドルグループ「Sweet Diva」のセンターボーカル・萩原さくらとナンバー2の宮澤エレナが取材で訪れた女子プロレス団体ベルセルク。
エレナのプロレスを揶揄する言動がベルセルク所属レスラー風間璃緒の逆鱗に触れ、璃緒の「アイドル風情が」の発言にさくらが激怒。
売り言葉に買い言葉から「決着はリングで」となり、アイドル対レスラーの異種格闘技戦が実現…したものの、璃緒になす術も無くボロ雑巾にされたさくらはその場でプロレスラー転向宣言。
というのが序盤のプロットなのですが、画はほとんど股間のアップ、音はさくらの悶絶喘ぎ声という「ええっと、エロアニメですか?」な仕上がり。
久しぶりの格闘アニメという事で期待していたのですが、凡庸な演出と動きの少ない絵面をリビドーで補完する体勢にちょっとがっかり。
何より、スリーパーホールドとアナウンスされている璃緒の技がどうみてもフェイスロックといういい加減さが…(写真一番下)。
フェイスロックじゃ落ちねえよ…。長与千種あたりをアドバイザーに迎えることはできなかったのだろうか。
プロレス団体を取材で訪れた素人がヒドイ目に遭う、ってのは実際良くある話のようで、その昔、夢枕獏がUWFの道場見学時に藤原喜明の“洗礼”を受けています。
時に昭和60年2月13日。
某週刊誌の取材に同行させてもらった獏氏は、目の前に展開する(夢のような)練習風景に思わず口元が緩んでしまった…のを「馬鹿にされた」と勘違いした藤原が、
「(関節技は)かけられてみなきゃ、わかんないよ。記者さんたちは腕なんか組んで見てるけどね。あまり効いてないと思ってるんじゃないの?」
リングに上げられた獏氏は軽く二桁以上の関節技をかけられたそうです。
「痛たたたたたたたた。痛い。痛い。痛い!」
“それしか口から出てこない。小説家のボキャブラリーの糞もない。単純な痛みに勝るものなど、この世にはないのである”
(夢枕獏著「猛き風に告げよ」より)
この、他に勝るものなき単純な痛み、を演出する事ができれば、このアニメは勝ったも同然だったのですが、正直、残念な仕上がりでありました。