なりふり構わぬバッタもん邦題。ニューセレクト×アルバトロスという最凶タッグ。
全部空クジ当たり無しの鑑定書が付いていてもおかしくない状況ですが、なかなかどうして。
設定と脚本は悪くありません。心にカーペンターが宿っています。
問題はひとつだけ。役者と演出が追いついていない。ただそれだけです。
「セクター5[第5地区]」(2012年/トドール・チャプカノフ監督)
このコーヒー・ショップみたいな名前、どこかで…と思ったら「YOGAN-ヨウガン-」「TATSUMAKI-タツマキ-」の監督でした。
だから何だ、という話ではありますが…。
ルーマニアの首都ブカレスト。人間より吸血鬼の方が多い街。
国連は吸血鬼との共存を模索しましたが失敗。セクター5と呼ばれる吸血鬼居住地区を作って彼らを隔離してしまいました(ここいらへんが「第9地区」と似ていると言えば似ています)。
ここで人間も吸血鬼も見境無く殺す猟奇殺人事件が多発。
デリックス刑事は刑務所に収監されているヴァンパイア・ハンター、ハーカーと共にセクター5の深層部へ。
猟奇殺人の犯人は血液感染で変異した亜種ヴァンパイアでした。
デリックスは、セクター5を統率するヴァンパイア、ニコライと共闘。
かつて余命いくばくも無い妻を本人の意思に反してヴァンパイアにしてしまった刑事、家族をヴァンパイアに殺された兄妹、そして兄が亜種ヴァンパイアに変貌してしまったヴァンパイアの弟。
それぞれの事情を抱えるはみ出し者たちが呉越同舟チームを結成。
上手に撮れば「ヴァンパイア/最後の聖戦」+「ゴースト・オブ・マーズ」なカーペンター節を聴かせる事も出来たと思うのですが、そこは低予算映画の悲哀、そうそう上手くはいきません。
ヴァンパイア・ハンターのハーシーは、本来なら「スネーク」のような佇まいを見せなければならない立ち位置ですが、まるで凄みがありません。
登場シーンは収監されている刑務所内での大喧嘩。ここで腕っ節の良さを観客にアピールしなければならないのに、この騒乱シーンがぬるいぬるい。
ハエが止まりそうなパンチ、まるで痛くなさそうな蹴り。段取り消化で精一杯なスローモーな大立ち回りに激しく腰砕け。
ドニー・イエン先生なら…って前にも使ったな、この例え。
刑事とヴァンパイア・リーダーはそこそこ格好良かっただけに、このキャスティングは悔やまれます(表情も画一的で面白みが無いのよ)。
ヴァンパイア側ももう少しキャラを掘り下げてあげれば深みが増したのに。
色々と惜しい、でもアルバトロスだと思えば拾い物、な1本でした。