さて、続きです。
「エクソシスト・ビギニング」(2004年/レニー・ハーリン監督)
主役と一部の脇を残してヒロイン交代、相方差し替え、キーとなる少年も別人になって9割再撮。
ほぼ別物と言って良い二卵性双生児。
脚本の練り直しからポスト・プロダクションまで10ヶ月。撮影僅か42日。制作費は最小限。しかも撮影の最中に監督が交通事故で骨折。
もう絵に描いたような“受難”ムービーです(結局、興行的にも失敗するという最悪のオチ付き)。
経営陣からのリクエストの1番は「もっと派手に!」だったのではないかと思います。
オープニングは、見渡す限り広がる累々たる兵士の屍と逆さ十字。
ポール版では冒頭にまとめられた“オランダの悲劇”はフラッシュ・バックで細かく分割。そんなに引っ張らなくても、とも思いますが、これはこれでアリか。
どうしてもお蔵になったポール版を判官贔屓しがちですが、レニー・ハーリンはきっちり自分の仕事をしていますね。
善くも悪しくも華々しい(華があるという意味ではない)映画になっています。
砂に埋まった教会へは、ポール版ではメインエントランスが掘り出されるまで待って入りましたが、レニー版では天窓からとっとと侵入。
考古学者の行動としてはこっちが正解のような気がします。
まず飛び込んでくる“逆さ十字”がインパクト大。
パズズの像も、ポール版ではアフリカナイズされたデザインになっていましたが、レニー版ではお馴染みのイラク出土バージョンに差し替えられています。
終盤に“悪魔が乗り移っていたのは実は…”などんでん返しがありますが、同じシチュエーションをポールも撮影していたそうです。
ただ、気乗りがしなかった(上からの命令で撮った)せいか、思ったような仕上がりにならず、これ幸いとカットしてしまったようで。
上品だが地味なポール版か、ケレン味溢るる(オカルトと言うよりはバイオレンス・アクションに近い)レニー版か。
どちらも捨て(拾い)難いですが、ラストだけなら圧倒的にレニー版。
『お元気で。ミスター・メリン』
『ファーザー・メリンだ』
名乗りこそドラマの要、物語の始点であり起点であり転換点であり着地点です。