“地味”という理由だけで“なかった事”にされてしまったポール・シュレーダー版エクソシスト・ビギニングをようやっと観る事ができました。
確かに地味ですが、メリン神父の葛藤により深く踏み込んだ、そして妙に東洋趣味的な野心作でありました。
「DOMINION/PREQUEL TO THE EXORCIST」
(2005年/ポール・シュレーダー監督)
レニー・ハーリン版では引っ張り放題引っ張った“オランダの悲劇”を冒頭で丸見せ。
アフリカで発掘される古代教会の玄関前にはナイフ片手に大見得切りながら悪魔を踏みつける天使の像が。
こりゃどう見ても四天王(持国天、増長天、広目天、多聞天)じゃないすか。
教会内の像や絵画もハーリン版とは微妙に異なります(逆さ十字は無し。パズズの像もデザインが違う)。
悪魔に魅入られた少年はスキンヘッド&結跏趺坐で空中浮遊。
そしてメリンの耳元でこう囁きます。
『あの日に戻ってやり直したくはないか?
(Don’t You Want To Go Back?)』
気がつけばそこは雪のオランダ。ナチスに『皆殺しにされたくなければ、犠牲者10名をお前が選べ』と迫られたメリンのとった行動は?
全力疾走してくる悪魔が、お祈りひとつで木っ端微塵になるハーリン版の景気の良さはありませんが、この悪魔によるメリンの魂の救済(?)は実に興味深いです。
ヴィットリオ・ストラーロの映像にちゃちいCGを乗せる(特にちょこまかとモンティパイソンのアニメのように動くハイエナ)のは如何なものかと思いますが、全体的にしっとりと落ち着いた仕上がりになっていました。
まあ、そこが“大作ホラーとしてどうよ?”って事でお蔵入りしちゃった訳ですが・・。