『戦線から遠退くと楽観主義が現実に取って代る。そして最高意思決定の場では、現実なるものはしばしば存在しない。戦争に負けている時は特にそうだ』
『何の話だ。少なくともまだ戦争など始まってはおらん』
『始まってますよとっくに。 気付くのが遅過ぎた。柘植がこの国へ帰って来る前、いやその遥か以前から戦争は始まっていたんだ。突然ですがあなた方には愛想が尽き果てました。自分も南雲警部と行動を共に致します』
『後藤君。君はもう少し利口な男だと思っていたがな』
『二人とも連れて行け』
『…!!!』
『だから! 遅過ぎたと言ってるんだ!』
いやあ、打っているだけで肩に力が入る名台詞です。
「機動警察パトレイバー2 the Movie」(1993年/押井守監督)
本作の原型であるOVA「二課の一番長い日」に於ける南雲隊長の大啖呵(最下部に追記)にも痺れましたが、後藤隊長の静と動を使い分けた口上も負けず劣らず。
ここに限らず、本作に於ける後藤隊長は名台詞生産機。
『まともでない役人には2種類の人間しかいないんだ。悪党か正義の味方だ』
対する悪党、荒川茂樹も負けていません。
『悪い軍隊なんてものはない。あるのは悪い指揮官だけだってね』
『舞台はミスキャストで一杯。誰もその役を望んじゃいないのにな。素敵な話じゃないか。これが俺達のシビリアンコントロールってやつさ』
本来主役なはずの泉野明も終盤になってようやく参戦。
『私、いつまでもレイバーが好きなだけの女の子でいたくない。レイバーが好きな自分に甘えていたくないの。お願い。車出して』
しかし、今回に限りヒロインは南雲しのぶ。
『ここからだと、あの街が蜃気楼の様に見える。そう思わないか』
『例え幻であろうと、あの街ではそれを現実として生きる人々がいる。それともあなたにはその人達も幻に見えるの』
『気付いたときにはいつも遅すぎるのさ。だがその罪は罰せられるべきだ。違うか』
『柘植行人。あなたを逮捕します』
男も女もハードボイルドだ。で、何とこの後日談が実写版で語られるようなのですが…(明日に続く)。
追記:「機動警察パトレイバー/初期OVA/二課の一番長い日」より南雲隊長の大啖呵もご堪能ください。
『承服できません!包囲の外に、上空にも報道陣が詰めかけております。全国民注視の中でどのような情勢があるにせよ、ただの1発も反撃することなく、無抵抗で本庁舎を明け渡すような事があれば、それは警察が自らの手で敗北を認めたことになります。それこそ彼らの思う壺ではありませんか。
国を守るべきものが国を乗っ取ろうとするに対し、これを打倒するは我々をおいて他になく、今こそ全国民の期待は我々の双肩にかかっているはずです。
確たる証拠すらなく、否、確たる証拠があったにせよ、彼らの恫喝を前に戦わずして膝を屈するなど言語道断!
たとえ守備隊全員がこの場で果てようと、一歩も引くわけには参りません!』
どんだけオットコ前なんだよ、南雲さん。