「覚えておくのはひとつだけ。この仕事は報われない。
思い出を引き裂くのが私たちの仕事なので…」
84,920時間。約9年と4か月。10年足らずの寿命で人格・記憶が崩壊する人工の心を持ったアンドロイド、ギフティア。
寿命がくる前にギフティアを回収する、それがターミナルサービスのお仕事。
もう、この設定だけで「ヤバイ(泣)」感満載です。
「プラスティック・メモリーズ/第1話・はじめてのパートナー」(2015年4月4日深夜BS11放送/藤原佳幸監督)
親のコネで大手企業SAI社に潜り込んだ水柿ツカサ。配属されたのは本社ビル裏手にひっそりと佇むターミナルサービス課。
ターミナルサービス課は人間とギフティアの混成部隊。回収は人間とギフティアがペアで担当します。
ツカサは回収実績ナンバーワン(でもちょっと訳アリっぽい)のアイラと組む事に。
ギフティアの回収、それは10年近く共に暮らした“家族”をむしり取る事。
別れを惜しみつつ対応してくれる人もいれば…。 「帰れ!」
「あんたたちはあの子を消耗品としてしか見ていないかもしれないけどね、私にとっては唯一の家族なんだ! どんなことがあってもこれからもずっとニーナと生きていく。あの子を失うくらいなら私は死んだ方がマシさ!」
ターミナルサービスはレポマンではないので、強引な回収はできません。事前に所有者から承諾書にサインを貰い、回収に立ち会ってもらわねばなりません。
泣かせる気満々の展開ですが、回収率ナンバーワンを誇る(誇った?)アイラがかなりのドジッ娘であるのが程よいバランス。
所有者の心を開くアイラの“とっておきの考え”が、ハーブティーのおもてなし。
ポット→クッキー付き→はちみつカステラ→バスケット+3段タワー皿と断られる度にゴージャスにグレードアップ…って他の方法は思いつかないんかい!?
「私は怖い。こんな事なら思い出なんてなければよかったって…。記憶なんて蓄積されなくてプログラムだけで自動的に生きる存在だったらどれだけ楽だったろうって…」
回収を素直に受け入れているニーナに回収人の立場を忘れて心情を吐露するアイラ。彼女が抱える闇も深そうです。
記録された思い出(メモリーズ)を完全消去して回収車に収納されるニーナ。これはもうドナドナ。死者との別れ以上に辛いものがあります。
何故、84,920時間というソ●ータイマーのような寿命設定がされているのか。何故、筐体変更に伴う記憶のサルベージが出来ないのか。疑問は山積みですが、おいおい説明があるのでしょう。
原作無しのオリジナルなので先読みができない面白さがあります。
シナリオは『STEINS;GATE』の林直孝、監督は『未確認で進行形』の藤原佳幸、アニメーション制作は同作を手がけた動画工房が担当。キャラクター原案は『IS 〈インフィニット・ストラトス〉』(MF文庫J版)のokiura、キャラクターデザインは『ゆるゆり(TVシリーズ)』の中島千明、音楽は『荒川アンダー ザ ブリッジ』の横山克。
泣かせの後に軽い下ネタで和ませて終わる辺り、作り手の“エンタメに踏みとどまろう”感が見え隠れしてほっとします。