“殺人未遂 4年追加” 『…これは安かった』
大小重ねてコツコツと。最長刑期41年7ヶ月。
“犬か猫になってもいい。俺は<シャバ>に出たい”という力強い惹句がピタリと嵌る“脱獄バカ一代”。松方弘樹物語。
「脱獄広島殺人囚」(1974年/中島貞夫監督)
タイトルから連想するような殺伐さはありません。あるのは折れない負けない挫けない生命力と自由への渇望。
企画当初のタイトルは「脱獄広島刑務所」。これが法務省からのクレームで変更になったんだとか。
脱獄×刑務所という組み合わせがマズかったようですが、翌年「暴動島根刑務所」が公開されたって事は、暴動×刑務所はOKという事か。暴れてもいいけど逃げちゃ駄目。分かりやすいな、法務省。
昭和22年、殺人罪で20年の判決を受けた植田正之(松方弘樹)は、特技脱獄、趣味脱獄。
中庭にある独居房“お稲荷監房”の建て付けが古いと見るや、即大暴れして入居権確保。
6時間掛けて手錠を壊し、便器を砕き、腰骨削って大脱走。
以降、脱獄→間抜けな理由で再逮捕→刑期加算を繰り返します。刑期加算テロップが何度も踊る様はもはや笑うしかありません。
これが実話ベースというんだからもう…。
線路内を大根丸かじりしながらふてくされたように歩くラストシーンの見事なぶったぎり感。潔さに惚れ惚れします。「仁義なき戦い」とは一味違うアナーキーの極北。
人生賛歌と言っていいと思います。