『電気冷蔵庫には5年の保障があるけど、ワイらには明日の保障もあらへんのやで』
だから好きなように生きる。ネチョネチョと。
「893愚連隊」
(1966年/中島貞夫監督)
893(やくざ)と題していますが、愚連隊はやくざではありません。また、やくざという単語も作中一度も登場しません。
やくざを指す単語は“博打打ち”。なのでタイトルの意味合いは「893(博打打ち)vs愚連隊」。
京都を根城に白タク、恐喝、美人局などをシノギにしているジロー(松方弘樹)、参謀(荒木一郎)、オケラ(広瀬義宣)の愚連隊トリオ(+ハーフのドライバー、ケンとスケコマシ担当としてスカウトした大隅-近藤正臣-)。
ここに15年の刑期を終えて出所してきた元愚連隊、杉山(天知茂)が合流。
製薬会社の原薬を強奪して買い戻し金1千万をせしめようとしますが、博打打ちの横槍が入って骨折り損。
組織相手に勝てるわけがないと一旦は諦めるジローらでしたが…。
全編京都ロケ(無許可ゲリラ撮影)を敢行した青春群像劇。
博打打ちと愚連隊、愚連隊の世代感覚の違いなど対立構造が立体的。博打打ちの黒川(高松英郎)の「今更愚連隊に戻ってどうする。うちの組に来い」という誘いに対して杉山が
『(○○←音声消去)組長たらは嫌いなんや』と応えるシーン。消された台詞は『天皇たら』。
『天皇たら組長たらは嫌いなんや』…特攻の生き残りという杉山のキャラを反映した台詞ですが、映倫と揉めちゃったんだそうです。
現代を飄々と生きる松方弘樹が主役ではありますが、時代の変化についていけない不器用な男(鶴田浩二の十八番)を演じた天知茂がいい感じでした。