“♪何かを変える事が出来るのは、何かを捨てる事が出来るもの”
アルミンの台詞であり、「紅蓮の弓矢」の歌詞でもある、戦いの非情さを象徴するこの一節。
では、捨てるものが己の命だったら。
捨てるのではなく捧げることが、局面打開の唯一の手段だとしたら。
絶望の絨毯爆撃の中で、尚過酷な決断を迫るノーマーシィな展開。読者も彼らと共に戦場へ。心拍数あがり放題。
「進撃の巨人/第20巻」(2016年8月9日第1刷発行/諌山創著)
シガンシナ区奪還の使命に燃えるエレンらの前に立ちはだかるかつての仲間。鎧の巨人(ライナー・ブラウン)、超大型巨人(ベルトルト・フーパー)、そして謎の指揮官・獣の巨人。
序盤で壊滅状態に陥った調査兵団。生き残ったのは、エルヴィン、リヴァイ、104期卒業生、そして新米兵士たち。
超大型巨人の放熱と獣の巨人の投擲(ジャコビニ流星群のように石礫が降ってくる。一種のクラスター爆撃)で兵団は近づくことすら出来ず。敗走か、特攻か。
『お前もわかってんだろ。いくら馬を守ったってなぁ…それに乗って帰る奴は…誰もいないって!!』
『俺は選ぶぞ。夢を諦めて死んでくれ。新兵達を地獄に導け。獣の巨人は俺が仕留める』
『我々はここで死に、次の生者に意味を託す! それこそ唯一!!この残酷な世界に抗う術なのだ!!』
『エレン! 起きろ! 海を見に行くよ!』
悲壮と絶望の中、火中の栗を拾いに行った窮鼠の払ったデカ過ぎる代償。
諌山氏の画力に関してはあれこれ言われがちですが、ここ一番の構図は本当に息を呑む素晴らしさ。コマ配分は映画で言えば編集。この急緩のリズムの取り方、タメのタイミングは天賦の才。
12月まで待てってのはご無体ってもんですぜお代官様、な凄惨な引き。
待てねえ…でも一気に読みたいから、待つ。