中村主水の幕引きとしてはあまりに情けない(茶番にもなっていない)出来であった「必殺!主水死す」から9ヵ月後に劇場版として誕生した新シリーズ1作目。
「必殺始末人」(1997年/石原興監督)
主演は田原俊彦。チームメイトに南野陽子と俊藤光利。元締めに森次晃嗣と樹木希林。
シリーズを通してメインキャメラマンを務めてきた石原興による演出、全編に渡って使用される往年シリーズのテーマ曲…紛うかた無き正当派必殺なのですが、前口上の無いオープニングはなんとも寂しい。
まるでVシネ(実際、二作目以降はVシネなのですが)のような安いタイトル。やはり始まりは早坂暁によるナレーションで飾って欲しかった。
田原俊彦はいい感じ。重さはないものの流麗な殺陣を魅せてくれます。表情もクール。
その割に出番が少ないのは残念無念。作り手としてはアイドル映画と呼ばれるのを避けるため、ドラマとしてのバランスを考慮したのではないかと思いますが、こちらとしては『ああ、なんかトシちゃん観てぇ』な衝動に駆られているのでいささか肩透かし。もっとトシを!
逆に出番が多いのが南野陽子なのですが、う~む、彼女のアイドル然とした軽さと明るさは必殺には似合わないですねえ。
俊藤光利も10年後の「新宿暴力街 華火」ではいい雰囲気になっていましたが、この時点ではまだ「ええっと…どちら様?」
北町奉行所与力・白鳥右京(森次晃嗣)による偽装仕置によって闇の世界に生きる者となった浪人・山村只次郎(田原俊彦)。
お上の裁けぬ悪を裁くために始末人を組織した白鳥でしたがいつしか私利私欲に溺れ…。
事件の過程で元締めが牢内の囚人への差し入れを業務とする「地蔵屋」の女将・おとら(樹木希林)にスイッチしていくなどそれなりに凝った構成にはなっています。
新生仕事人はこの路線でいってほしかったなぁ。