デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

【劇画の間合いに立つ】日本暴力地帯【若き清水健太郎に震える】

『あんたの気持ちも分からんではない。せやけど、大和田組若頭としてあんたを仙波のところに行かすわけにはいかんのや』

『…それも分からんでもない』

敵と味方の分水嶺をするりと跨ぐ劇画の間合いに立つ中条きよしと清水健太郎

画になるなんてもんじゃない。

「日本暴力地帯」(1997年/村上和彦監督)

現時点で140本のVシネに関わって来た劇画家・村上和彦の初監督作。

始まりは昭和63年、舞台は愛媛県松山市

そこは全国制覇を掲げる日本最大の広域組織・三代目大和田組にとって何としても落としたいシマ。

地元老舗の矢野組が大和田組傘下の仙波組の的にかけられ組長・矢野(白影こと牧冬吉。恐らく本作が遺作)が死亡。組は解散。

矢野組若頭・鬼頭清次(中条きよし)は大和田組の事始め式の会場に単身殴り込み。目指すは頂点、三代目大和田組会長・島村剛造(芦田伸介)。

並み居る幹部連中をささらもさらにして会長迄あと一歩と迫りますが、立ちふさがった大和田組若頭・荻島朝重(清水健太郎)の一太刀を浴び、ドスの雨降らされて無念の敗退。


島村会長の計らいで命だけはとられなかった鬼頭は8年後の平成8年、高松刑務所を出所。

出迎えたのは荻島。待っていたのは島村。

勝ち目のないカチコミをかけてきた鬼頭を買った島村は何と「任侠道を貫く闇の仕置人として大和田一門の不正の粛正」を依頼。

その場では一笑に付した鬼頭でしたが、松山に事務所を構えた仙波組が、汚い罠で矢野組が仕切っていた港湾事務所の乗っ取りを仕掛けて来たことで島村の依頼を受けることに。

『お前に盃はやれん。しかし、日本任侠道を守るという大義の上に於いて、ワシとお前は親と子じゃ。鬼頭よ、これこそがワシとお前の絆の証じゃ』

絆の証。それは鬼頭の背中に掘られた大和田組の代紋と≪会長代行≫の文字。

必殺仕置人・鬼頭清次の誕生です。


鬼頭の監視と殺しのアシスト(後始末とも言う)を受け持つ荻島が鬼頭以上にかっちょいい。

鬼頭が始末した(ひとりは首斬り落とした)仙波組の実行犯ふたりの葬儀会場で、死んだ2人の「遺書」を読み上げ、組に迷惑をかけた事に対するお詫びの自殺であると有無を言わさず断定する姿の凛々しさったらありません。


清水健太郎はこの翌年から「首領(ドン)への道」がスタート(中条きよしは製作総指揮)、翌々年には中条きよし主演の「必殺!三味線屋勇次」にゲスト出演しています。

因みに原作者兼監督の村上和彦は後に覚せい剤で逮捕される健太郎の後見人を務めることに。

今回の主役3人の役どころ(元締め・島村会長、仕置人・鬼頭、監視役・荻島)に既視感があるなぁと思ったら、

正に「新・必殺仕置人」でした。


本作の撮影と2作目以降の監督は、必殺シリーズを支えてきたカメラマンの石原興です。

 

★似たような設定の近作にこんなのもありましたね。


★中条きよしでひとつ。

清水健太郎からもひとつ。

 

 

 

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★本日9月25日はマイケル・ダグラス(1944~)、マイケル・マドセン(1957~)、Wマイケルの誕生日(おめでとうございます!)

各々名をあげた初期の作品をひとつずつ。