摩天楼を翔けるアステカの蛇神。
「空の大怪獣Q」(1982年/ラリー・コーエン監督)
QはQuetzalcoatl(ケツァルコアトル)の頭文字。アステカ神話の文化神・農耕神であり風の神。古代ナワトル語で「羽毛ある蛇」(ケツァルが鳥の名前、コアトルが蛇)を表しているんだそうです(今日もお世話になっておりますWikiさん)。
ラドンやリトラやラルゲユウスと違うのは「腕」があること。形状としてはヒドラやテロチルスに近いです。
テロチルスの回を書いた上原正三を取り上げた時にもチラと触れましたが、特撮はアングルが命。
円谷は遠景と近景による奥行きで画面を作っていましたが、本作は“空の大怪獣”という建てつけからか“高さ”を強調しています。
鳥の目、人の目を使い分けることによって、動きのある高さを表現すると共に特撮パートを最小限にするという一石二鳥。
事件を追うシェパード刑事役にデヴィッド・キャラダイン(ブルース・ウィリスも演りたがったそうですが、当時はまだ無名だったので落選したそうです)。
本来なら彼が主役で決まりですが、実は本作の主役は“何をやってもうまくいかない男”ジミー・クィン(マイケル・モリアーティ)。
小心者のくせに女には強気。宝石店強盗の片棒を担がされた挙句に肝心の宝石も失くし、強盗仲間からは持ち逃げ疑惑を掛けられてつけ狙われるわ、捕まった奴らはジミーが主犯と嘘自白するわで不運の佃煮。
偶然逃げ込んだクライスラービルで蛇神の巣を発見し…。
捻りの効いた構成ではあるのですが、こいつが本当に駄目駄目な男なので、彼を愛せるかどうかで評価が変わってくると思います(マイケル・モリアーティってどこかで見た顔だなぁと思ったら「ペイルライダー」に出てた人ですね)。
クライマックスのクライスラービル大攻防戦はなかなかの迫力。
ひとつ残念だったのは、ケツァルコアトルを現代に蘇らせようとアステカの儀式(生贄志願者を殺して皮を剥いだり、心臓を取り出したり)を続ける男のエピがうまく本編に絡んでこなかった事。
キャラとエピがもう少し噛み合ってくれればバランスの良いカルト(って何だ?)になったと思います。