先日、会社近くの本屋で「持ち歩き読書」を頑なに拒絶する漬物石のような本発見。
「はうあ、こ、これは“上原正三シナリオ選集”!」
1,000本を越える作品から50本を選り抜いて5,460円(高くない!)。
沖縄人・上原氏と言えば“マイノリティの怨念”と“東京破壊願望”。
二つの想いが百花繚乱に狂い咲いたのが、
「帰ってきたウルトラマン」(1971年4月~1972年3月)
“マイノリティの怨念”は、メイン・ライターにもかかわらず“干される”原因となった第33話「怪獣使いと少年」(1971年11月19日放送)が有名ですが、今回は“東京破壊願望”の方に注目。
「帰ってきたウルトラマン」で上原氏は執拗に東京を蹂躙しています。サブタイトルだけでも、
「二大怪獣東京を襲撃」、「津波怪獣の恐怖 東京大ピンチ」、「二大怪獣の恐怖 東京大竜巻」、「怪鳥テロチルス 東京大空爆」・・・
どうですかお客さん、津波に竜巻に空爆ですよ。
「二大怪獣東京を襲撃」では怪獣の脅威よりも怪獣を倒す為に使用される秘密兵器スパイナー(小型水爆級核兵器)によって東京が焼け野原になる恐怖が描かれています。
沖縄を本土決戦の捨て駒にされた怨念が大爆発しているとしか思えません。
この他にも、主人公・郷秀樹(団次郎)が兄と慕う坂田(岸田森)と恋人アキ(榊原るみ)をまとめて惨殺する「ウルトラマン夕陽に死す」なんてトラウマ・エピソードも書いていて、血気盛ん(?)なシリーズでした。
シナリオからは離れますが、今回改めて「帰ってきたウルトラマン」を鑑賞して構図の取り方の絶妙さに驚きました。
“ホバリングするマットジャイロ舐めのグドン”とか、遠景と近景を巧みに織り交ぜた奥行きと立体感のある絵作り。特撮の基本ではありますが、実にかっちょいい構図が多々観られました。
「Q」「マン」「セブン」原理主義者の人たちは異論があるかもしれませんが、「帰ってきた~」は上原氏の怨念が爆発した暗黒舞踏の如き傑作シリーズだと思います。