『子供から全てが始まる。民族の未来も。お前らに未来は与えられない。共産主義は劣等民族に宿る。根絶すべきだ。我々は使命を遂行する』
昨日紹介した「心に刺さる戦争映画25選」で堂々3位のソビエト映画。
「炎628」(1985年/エレム・クリモフ監督)
舞台は白ロシア。ソビエト連邦という言葉すら死語になりつつあるのに“白ロシア”と言われてもなかなかピンとは来ません(よね?)。
正しくは白ロシア・ソビエト社会主義共和国(シロロシアじゃなくてハクロシア)。現ベラルーシ共和国。東にロシア、南にウクライナ、西にポーランド、北西にリトアニア、ラトビアと国境を接する、世界最北の内陸国です。
邦題の628というのは、第二次世界大戦中、ナチスに虐殺(住民ごと焼かれた)村の数。
因みに原題は「Иди и смотри」で直訳した英題が「Come and See」。
“第4の封印を解いた時、私は4番目の獣の声を聞いた。「来い、そして見るがいい」 現れたのは青白い馬。そこに跨る者の名は死。そしてその後に黄泉が従っていた”という「ペイルライダー」はじめ多くの映画で引用されているヨハネ黙示録からの引用…と思われます。
本作はレジスタンスに志願したひとりの少年の目を通してナチス親衛隊特別行動部隊アインザッツグルッペンの蛮行を抉り出す地獄巡り体験記。
あどけない笑顔が魅力的な少年の顔が深い皺を刻んだ老人のようになっていく。きっとこの少年は二度と笑うことがないだろう、とすら思える絶望の重ね焼き。
ロシア映画独特の肌触り。相手が横にいるのにカメラ目線で話しかける。語り手のアップと切り返し(たけしが影響を受けていそう)。自然、特に水の描写の美しさ(タルコフスキーの「鏡」に似た味わい)。
雨上がりに森の樹を揺すって簡易シャワーを楽しむシーンなど幻想的とすら(直後に爆撃というコントラストもいい)。
何度も挿入されるドイツ軍の偵察機が象徴的(デストピアSFに出てくる常時旋回している監視飛行船みたいな感じ)。
※第二次世界大戦時の独単座双胴機と言えばFw189偵察機ですが、機影を見る限り米軍のロッキードP-38ライトニング重戦闘機っぽくもあり、正体不明。
ソ連側のプロパガンダと言ってしまえばそれまで&その通りですが、その分差っ引いて尚十分な衝撃が残ります。