これはドキュメンタリーではありません。映画です。だから映画的嘘が混じる。当然です。
映画的嘘には追加と削除があります。主人公の少女に亡霊が見えるという設定、アルピノの少年兵との恋愛は追加、とりまく状況の説明を端折るのは削除です。
この追加と削除のバランスの悪さが私をモヤモヤさせます。
「機関銃をお守りに、命がけの恋をした」―このお花畑にも程があるキャッチコピーが私をモヤモヤさせます。
折角、コンゴの実情を伝えられるチャンスだと言うのに…。
「魔女と呼ばれた少女」(2012年/キム・グエン監督)
場所はコンゴ民主共和国。但し、具体的にそれを示す説明はありません。お話は難民キャンプと思しき集落を反政府軍が急襲する所から始まります。
反政府軍は子供を「収穫」し、大人を「処分」。収穫された子供は少年兵(「弾除け」「地雷探知機」とも言う)として活用され、足りなくなれば「補充」される消耗品です。
何故、難民が生まれるのか、政府軍と反政府軍は何を争っているのか、双方を支持しているのは誰か、とかは「命がけの恋」には関係ないので説明されません。
12歳で反政府軍にさらわれ、自らの手で両親を殺す事を強要され、過酷な肉体労働と殺戮の日々を過ごし、夫とした男も目の前で殺され、挙句、夫を殺した男の子を宿した少女。
過酷すぎる現実ですが、この過酷さが「亡霊を見ることができる能力」によって希釈され、ファンタジーの衣を纏ってしまったのが個人的にはちょっと…。
同じ“悲惨な状況を少女の目を通してファンタジックに描いた”映画に「サン★ロレンツォの夜」がありますが、あちらは第二次世界大戦末期、こちらは現在進行形。まだ、ファンタジーにするには生々しすぎる題材です。
舞台に関する説明がないのは前述しましたが、時代に関する説明もありません。
なんせ背景が、川べりのキャンプ→密林→山岳なので一体今が過去なのか現在なのか。後半、トヨタのエンブレムをつけた車が出てきて「あ、現代か」と悟った次第(我ながら間抜けだと思います)。
テーマがテーマだけにケチをつけてはいけないという強迫観念に晒されますが、映画としての出来は「う~む」な気がいたします。
比べるのもどうかと思いますが、その衝撃度において「炎628」の足元にも及びません。
コンゴ民主共和国の現状について知りたい方はここいら辺が分かりやすいかも。
https://globalnewsview.org/archives/6485
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★本日(10月第2日曜日)は「商店街の日」
商店街と言えば…