デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

コーマンのケチ…。 ダンウィッチの怪

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ラヴクラフトの代表作の1本をロジャー・コーマンが映画化。既にこの1文の中に複数の地雷。それでも観たい踏みたい弾けたい。
 
なかなか機会がなかったのですが、昨年ランコーポレーションが廉価版DVDを発売。念願叶って観賞と相成りましたが、いやあ、聞きしに勝る低予算。
 
当初目論んでいたスタッフ、キャストが集まらなかった段階で「こりゃヒットは望めんのう」と判断したコーマンが予算をごりっと削ったらしく、本来金をかけるべきクライマックスが貧乏長屋の痴話喧嘩みたいなスケールに…。
 
コーマンのケチ…。
 
「ダンウィッチの怪」1970年/ダニエル・ホラー監督)
 
監督はラヴクラフトものでは数少ない成功例と言われる「襲い狂う呪い」(原作は「異次元の色彩」)撮った人なのであちこち工夫の跡は見られるのですが、やはり予算の壁は厚かったようで。


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セットやら美術やらはそれなりにいい感じ。
 
しかし本当に残念だったのは原作設定をこまごまと逸脱しているところ。
 
ウィルバーは10歳で大人サイズに成長した異形の人間なのですが、普通に好青年。本来なら大学図書館ネクロノミコンを盗みに入った際に番犬に殺されるはずが、警備員殺して奪取成功(おいおい)。


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盗み出したネクロノミコンを使って宇宙の扉を開かんとするウィルバー。
 
結果、ウィルバーが残した日記から彼の企み(外なる神の扉を開き宇宙を始原に帰す)を知ったアーミテイジ教授が、ネクロノミコンから扉を閉ざす呪文を解析し、併せて邪神の血を継いだウィルバーの双子の弟を倒して村を(宇宙を?)守るという後半の展開が全部チャラに。


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誤魔化しまくったウィルバー弟(左)。本来は右のような怪物になるべき。
 
ソフトにも問題が。ヨグ=ソトート(もしくはソトース)と表記されるべき“外なる神”が何故か(字幕では)ヤグ・サハ。確かにそう聞こえなくもないのですが、スクリプト見ると“YOG-SOTHOTH”になっています。ここは既に認知されている表現にして欲しかった。
 
原作読むの面倒だから映画で済ませちゃえ、とお考えでしたら本作はお薦めしません。
 
これなら漫画版「ダンウィッチの怪」PHP研究所)の方がいいかも。
 
時間がなければ画ニメの「ダニッチ・ホラー」、じっくり確認したければ水木しげる先生の翻案「地底の足音」をご覧ください。
 
目も使いたくないという無精者は人間椅子の「ダンウィッチの怪」をどうぞ。
 
余談ですが本作にはエイドリアンになる前のタリア・シャイアがタリア・コッポラ名義で出演しています。

 

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