
『BIGになって帰ってくるから!』
『働け~!』
所謂ひとつの家族の肖像。
BIGになるために故郷を後にし、売れないデスメタルバンドのボーカルとして喰えない日々を送っているモヒカン男が、腹ボテの彼女連れて里帰りしたら、頑固親父が末期癌。

以上です。この設定から想定されるストーリーから逸脱することはありません。
脚本だけ読んだらビタ一文印象に残らない話だと思います。予定調和を煮〆たありふれた展開を魅せてしまうのはひとえに役者。
もはや存在そのものが頑固親父という概念のメタファーになっている柄本明。どこに嵌めても違和感ゼロのオールラウンドかあちゃんもたいまさこ。
そしてどこまで力を抜けるのかの限界に挑戦しているとしか思えない究極の自然体、松田龍平と保護色のように背景に馴染むことによって存在感を浮き彫りにする前田敦子。
このカルテットが織りなす日常。人生矢沢一筋(『矢沢は広島県民の義務教育です』)の柄本、揺るがぬカープファン、菊池大好きなもたい。

意見を求められれば『俺は…ま俺なりにやっぱ色々考えたんだけど、やっぱなんだかんだあって、○○の言う通りだと思う』という極限の付和雷同男、松田。
いい子だけどアホの子、前田(「もらとりあむタマ子」の時も思いましたが、この子良い役者さんですよ)。
この面子で末期癌言われましても(笑)。
なんだかんだ言って最後は泣かせに走るのかと思っていたら、親父乗せたストレッチャーがだんじり顔負けの大暴走(しかもBGMは松田のバンドのデスメタル「断末魔」)。
ここ、劇場ならそこそこウケたと思いますが、ビデオだと引きます。潮干狩りができるかと思いました。

個人的見所(聴き所)は冒頭の松田のバンド「断末魔」のライブシーン↑。松田くんがいい感じのデス声を聴かせてくれます。