デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

ネジ締め忘れたゴシックホラー。 ダーケスト・ウォーター

f:id:zombieito:20200112134159j:plain

家モノ(特に年季の入った洋館モノ)は大好物なのですが、やはりそれなりの工夫は必要。雰囲気だけで押しきられるのはちょっと…。

「ダーケスト・ウォーター」

(2017年/ブライアン・オマリー監督)


1920年アイルランド。広大な土地(湖含む)の中に佇む邸宅。住んでいるのはレイチェルとエドワードの姉弟ふたりだけ。

この館で暮らすに際してのルールは3つ。訓えはマザーグースのような歌に乗せて先祖代々親から子へ…。

  1. ♪0時の鐘が鳴る前にベッドに入りなさい。
  2. ♪よそ者を家に入れてはなりません。
  3. ♪ふたりは離れてはいけません。


歌の締めくくりは♪ふたりのが私たちだけのものである限り、わたしたちは下から見守ることでしょう

一種の契約信仰ですね。ある意味「悪魔の手毬歌」以上に恐ろしい内容です(特に〆の部分)。

ルールを守っているうちは守ってやる(と言うか生かしておいてやる)。しかし、もし破ったら…。

f:id:zombieito:20200112134447j:plain


ふたりの両親は1年前に湖で入水自殺。その両親も。そのまた両親も…。

エドワードは神経病んで家から一歩も出られない引きこもり。

姉レイチェルは兵役から(片足失くして)戻ってきた雑貨屋の息子ショーンと駆け落ちを画策しますが…。

初期設定はまずまずです。邸宅も実在する年代物を使用しているだけあっていい雰囲気。

でもそれ以外が壊滅的に駄目。ランニングタイム93分ですが、マトモに撮れば30分で終わります。

何故、先祖代々呪いに縛られているのか、何故、最後には皆入水自殺(ふたりの両親に関しては無理心中)を選んでしまうのか。個々のルールを破るとどのような災いが起きるのか。何の説明もありません。

最後の方で床下(鏡に映したような屋敷が水没している)から、変な人たち(ご先祖様軍団?)がわらわらと湧いて出ますが、こういう裸で黒目で這って来るタイプはおなか一杯ノーサンキューです。

f:id:zombieito:20200112134544j:plain

よみうりランド/近藤玲子「水中バレエ劇場」…ではない。


重力を無視した水の描写とか凝っているつもりかもしれませんが、こんなの40年以上前にタルコフスキー「鏡」でやっているしなぁ。

この手のオチって「愛は呪いを砕く」なお花畑エンドか「それで勝ったと思うなよ!」なバッドエンドの2択だと思うのですが、本作は「なんじゃそりゃそりゃ」な反則エンド。うーむ、それで済むならとっとと…。

お話のモチーフは「アッシャー家の崩壊」らしいのですが、だったらこの屋敷使って「アッシャー家~」作ってくれた方が良かったかな。

ちょっと「仄暗い水の底から」とか、伊藤潤二コレクション「橋」に似た手触りもあって、色々惜しい作品ではありましたが、やはりゴシックホラーとしてはネジの締め忘れが目立つ失敗作だと思います。 

★ご参考 

mandarabatake.hatenablog.com

 

f:id:zombieito:20191228104234g:plainランキング投票です。よろしければワンポチを。

 

-----------------------------------------------------------------------

 ★本日1月24日は「ボーイスカウト創立記念日
1908年(明治41年)のこの日、イギリスでボーイスカウトが結成された…んだそうです。
ボーイスカウトと言えば…

mandarabatake.hatenablog.com