森で迷って熊に会う…という(だけの)実話を「これでもか!」というくらいリアルに映像化。
何も足さない、何も引かない、虚飾を排した痴話喧嘩と大自然の驚異。
「ブラックフット」(2014年/アダム・マクドナルド監督)
いかにも熊が主役に見えるタイトルですが、原題はBACKCOUNTRY。「秘境」とか「未開地」ってイメージですね。
アウトドアは得意ですが、都会では良いところ無しの駄目男、アレックス。
何とか恋人ジェン(弁護士‼)に男らしいところを見せてプロポーズしたい。
ならアウトドアだ。あの美しい湖のほとりでマッチ無しで火を起こして指輪を渡せば『ああ、アレックス』となってテントでしっぽり。間違いない。
ジェンは乗り気じゃないようだが、あの山なら熟知しているし危険もない。地図? いらんよそんなもの。ジェンは携帯ばっか見ているからこそっと車に置いてきちゃおう。
カヌーで湖渡って、森を抜けれて一山超えれば…ほーら湖が…
…ない。
目の前には広がりたいだけ広がる樹海。ここは…どこだ!?
樹海の俯瞰映像。素人目にも出られる気がいたしません。
テントの外では何かの気配。起きてみれば薙ぎ倒された樹が散乱。
という大人の「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」。
冒頭、車の中でバカップルな会話。惨事の前に意味のない会話を羅列するのは「悪魔のいけにえ」から続くお約束…ではありますが、これが小一時間続くとなると話は別。
ええっと…熊は? と思い始めた57分過ぎ。ようやく熊さんご登場(因みにランニングタイムは92分)。
絶対に見たくない光景。
待たせまくっただけあってここでの暴れっぷりはなかなか。
さて、ここから智恵と勇気の反撃が始まるかと思いきや始まりません。野生の熊相手に智恵も勇気も暖簾に腕押し馬耳東風。選択肢はひとつ。足が折れても走って逃げろー!
この「ま、実話だから…」と開き直った地味さ加減に売る側も困惑したようで。
ポスターデザインの遷移を見るとその試行錯誤ぶりが伝わってきます。
まずは本国カナダオリジナル版。
遠い→→→→→→近い!→→→→→→凄く近い!
どんどん熊が危険になっていきます。では日本含む各国の対応は…。
左はイタリア版。熊立ち上がって遠吠えしちゃっています(殺る気満々)。
中央は日本版DVDジャケ。『助けて…』の悲壮なキャッチと犠牲者が追加。
そして右がTSUTAYA限定レンタルジャケ。何ともおどろおどろしい書体で「クマ地獄」という凄いサブタイが書き加えられています。
「レッド・ウォーター/サメ地獄」にあやかったものと思われますが、これだと熊の群れが地響き立てて襲ってきそうで迫力5割増し(本編に登場する熊は1匹だけですが)。
個人的には「グリズリー」のようなハリボ手×剥製どっかんエンターテイメントの方が好きだなあ。
★ご参考