『羽毛布団が何か知ってるか?』
『掛け布団じゃ…?』
『毛布だ。ただの毛布。なんで俺たちは羽毛布団が何か知ってる? 狩猟民族として生存に必須のものだからか? 違う。じゃあ俺たちは何だ?』
『消費者?』
『そうだ。俺たちは消費者だ。俺たちはモノに支配されているんだよ』
「ファイト・クラブ」よりタイラー・ダーデン先生の辻説法。
『俺たちはモノに支配されている』(台詞は「We're the by-products of a lifestyle obsession.」)
彼らはモノからの支配を逃れて“拳で語り合う”ファイト・クラブを創設しますが、ここにモノと距離を置くことによって、その意味を見極めようとした男がいます。
(2013年/ペトリ・ルーッカイネン監督)
フィンランド。ヘルシンキ。冬。
ペトリ(監督自身)の部屋はモノまみれ。失恋のショックでカードで爆買い。物欲リミッター解除の結果、ある意味、満ち足りた生活環境に。
しかし、ある時ふと頭をよぎる疑問。
これらは本当に生活に必要なモノなのか?
ペトリはある実験を計画します。
実験のルールは4つ。
- 全てのモノ(今、身に着けている服も全て)を貸倉庫に預ける。
- 持ち帰るモノは1日ひとつ。
- 1年間続ける。
- 1年間、買い物はしない。
残されたのは何もない部屋と生まれたままの自分。
雪で白く染まった深夜のヘルシンキを全裸の男が駆け抜ける。倉庫から最初の一品目を持ち帰るために。
まさか靴も下着も手放すとは。歯ブラシ1本ない引っ越し前状態の部屋。ゼロから始めるシンプルライフ。
そこから見えてくるモノの価値とは。
モノはただの小道具よ。おばあちゃんの箴言。
本当に必要なモノは何か、を見極める実験のドキュメンタリーとしては興味深いし面白いですが、ドラマとしての起伏は全くと言っていいくらい無いので、“映画”を期待すると肩透かしを喰うかもしれません。
介護施設に入ることになったおばあちゃん。欲しいものがあったら持って帰っていいよ、と母親に言われたペトリと弟ユホでしたが…。
『何も貰えないよ。(思い出を共有している)このお菓子入れだけでいい』
それはおばあちゃんの人生の一部をもぎ取るようで。機能性だけでは測れないモノの価値。
いい話だなぁと思いつつ、ふと自分の周りを見渡すと…。
積み上げたら優に5mは超すであろうアニメのBD/DVD。
その3倍では収まらないホラー、アクション、カルト映画のソフト。
開封すらされていないフィギュアの箱の山。
地震がきたら生き埋め確実なCD、ゲーム、コミックス。
終わっている人の部屋がそこにありました。
これ全部トランクルームに預けて1日ひとつずつ持ち帰るとしたら、どの順番にするだろう?
私の性格だと、ひとつも持ち帰らず、「この機会に全部買い直そう。まずは4Kのテレビと…」とか言い出しそうで怖いです。
★ご参考
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★本日7月7日は円谷英二特技監督と松林宗恵監督の誕生日です。この二人が手を組んだ作品と言えば「世界大戦争」ですが、私の推しはこの2本。
★★★★★★ STOP PRESS ★★★★★★★
モリコーネが!
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
エンニオ・モリコーネが逝去されました。
7月6日。落下事故で大腿骨を骨折し、その影響と合併症のためローマで。91歳。
追悼記事は別途あらためて。
ご冥福をお祈りいたします。