デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

ファイト・クラブに入る代わりに。 365日のシンプルライフ

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『羽毛布団が何か知ってるか?』

『掛け布団じゃ…?』

『毛布だ。ただの毛布。なんで俺たちは羽毛布団が何か知ってる? 狩猟民族として生存に必須のものだからか? 違う。じゃあ俺たちは何だ?』

『消費者?』

『そうだ。俺たちは消費者だ。俺たちはモノに支配されているんだよ』

ファイト・クラブ」よりタイラー・ダーデン先生の辻説法。

『俺たちはモノに支配されている』(台詞は「We're the by-products of a lifestyle obsession.」)

彼らはモノからの支配を逃れて拳で語り合うファイト・クラブを創設しますが、ここにモノと距離を置くことによって、その意味を見極めようとした男がいます。

365日のシンプルライフ

(2013年/ペトリ・ルーッカイネン監督)


フィンランドヘルシンキ。冬。

ペトリ(監督自身)の部屋はモノまみれ。失恋のショックでカードで爆買い。物欲リミッター解除の結果、ある意味、満ち足りた生活環境に。

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しかし、ある時ふと頭をよぎる疑問。

これらは本当に生活に必要なモノなのか?

ペトリはある実験を計画します。

実験のルールは4つ。

  1. 全てのモノ(今、身に着けている服も全て)を貸倉庫に預ける。
  2. 持ち帰るモノは1日ひとつ。
  3. 1年間続ける。
  4. 1年間、買い物はしない。

残されたのは何もない部屋と生まれたままの自分。

雪で白く染まった深夜のヘルシンキを全裸の男が駆け抜ける。倉庫から最初の一品目を持ち帰るために。

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まさか靴も下着も手放すとは。歯ブラシ1本ない引っ越し前状態の部屋。ゼロから始めるシンプルライフ

そこから見えてくるモノの価値とは。

モノはただの小道具よ。おばあちゃんの箴言

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本当に必要なモノは何か、を見極める実験のドキュメンタリーとしては興味深いし面白いですが、ドラマとしての起伏は全くと言っていいくらい無いので、“映画”を期待すると肩透かしを喰うかもしれません。

介護施設に入ることになったおばあちゃん。欲しいものがあったら持って帰っていいよ、と母親に言われたペトリと弟ユホでしたが…。

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『何も貰えないよ。(思い出を共有している)このお菓子入れだけでいい』

それはおばあちゃんの人生の一部をもぎ取るようで。機能性だけでは測れないモノの価値。

いい話だなぁと思いつつ、ふと自分の周りを見渡すと…。

積み上げたら優に5mは超すであろうアニメのBD/DVD。

その3倍では収まらないホラー、アクション、カルト映画のソフト。

開封すらされていないフィギュアの箱の山。

地震がきたら生き埋め確実なCD、ゲーム、コミックス。

終わっている人の部屋がそこにありました。

これ全部トランクルームに預けて1日ひとつずつ持ち帰るとしたら、どの順番にするだろう?

私の性格だと、ひとつも持ち帰らず、「この機会に全部買い直そう。まずは4Kのテレビと…」とか言い出しそうで怖いです。

★ご参考
 

 

 

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★本日7月7日は円谷英二特技監督松林宗恵監督の誕生日です。この二人が手を組んだ作品と言えば「世界大戦争」ですが、私の推しはこの2本。 

 

 

★★★★★★ STOP PRESS ★★★★★★★

モリコーネが!

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

エンニオ・モリコーネが逝去されました。
7月6日。落下事故で大腿骨を骨折し、その影響と合併症のためローマで。91歳。
追悼記事は別途あらためて。
ご冥福をお祈りいたします。