POVの利点のひとつは“繋ぎ”のカットが必要無い事。
時間が飛ぼうが、突然場所が移動しようが「(間の画なんか)撮ってねえ!(んだから繋ぎようがねえ)」。
結果、必要なシーンだけをブツ切れコマ切れで並べても違和感が無いどころか、スピーディなテンポを作ることすら可能(映像的不協和音とでも言うのでしょうか)。
新しい編集の形かもしれません(いや、それは言い過ぎか…)。
「悪魔の存在を証明した男」
(2014年/デヴィッド・イァング監督)
妻サマンサは、タロット占い師のアドバイスを聞いたために事故死…したと思い込んでいる夫マイケル(シェーン・ジョンソン)は霊的なものの存在全てを否定。
人の弱みに付け込んで神だの運命だの吹き込みやがって。このニセモノの詐欺師どもが。神も悪魔も霊感も超能力も存在しないことをこの俺が証明してやる! まずは手っ取り早く悪魔からだ。
通販で降霊グッズを買い揃え、本に書いてある呪文を唱え、悪魔祓いをしたという神父にインタビューし、霊媒師を訪ね、様々な実験に参加。
被験者は当然自分(撮影は友人)。どれもこれもデマカセだと思っていたのですが…。
耳鳴り、不眠、途切れる意識と記憶。ノイズはやがて言葉となり…。
実験に使った薬物による幻覚・幻聴を指摘する人もいるようですが、映像は演出ではなく記録という建てつけなので、そこに主観的認識誤謬が入り込む余地はありません。
『ひょっとしたら単に主人公が狂っているだけかも』という逃げ道を残していない辺りは潔いと言える…かも。