1981年2月16日、コネチカット州ブルックフィールド。
同棲中の恋人デビーの職場(ペットサロン)を訪れたアルネ・シャイアン・ジョンソンは、べろべろに酔っぱらってデビーの従妹マリー(9歳)を掴んで離そうとしないデビーの雇い主アランと口論になり、持っていた折り畳みナイフでアランを数回刺して殺してしまいます。
「酒とロリは身を亡ぼす」と言う教訓に満ちた三文事件でしたが、デビーの家族と関わりを持っていた心霊研究家ウォーレン夫妻の一言が話を混沌の淵に突き落とします。
『これはアルネに憑りついていた悪魔がやらせたものである』
犯人は悪魔だ、当然アルネに責任能力は無い、無罪だ、というわけです。
これが「悪魔が私に殺させた(THE DEVIL MADE ME DO IT←原題)」事件として有名なアーニージョンソン事件。
そしてこの事件に材を採ったインチキドキュメンタリー風ホラーが、
「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。」(2021年/マイケル・チャベス監督)
酷いにも程がある邦題ですが、裁判と言うステージで悪魔の存在を問うという前代未聞感が良く出ており、インパクトは抜群。
悪魔の憑依を立証…それは同時に悪魔の存在を証明することでもあります。
『証人は証言前に聖書に誓うだろ?裁判所が神の存在は認めている証拠だ。ぼちぼち悪魔の存在も認めていい頃間だと思うよ』
The court accepts the existence of God every time a witness swears to tell the truth. I think it's about time they accept the existence of the Devil.
そんな理屈が通るとでも思っているのか。
この歴史的大役を担うのがウォーレン夫妻なのですが、待て待て落ち着け待て。
そんなものどうやって証明するのよ。
何を以て悪魔の憑依(による殺人)と断定できるのか。
悪魔の存在証明と、事件との関係証明という全く別の次元の話を同時にやっつける無謀。
勿論、悪魔に弁明の機会は与えられません(悪魔が大演説してその場の人間皆殺しなクライマックスなら観てみたいですが…)。
子供でも分かります。こんなの無理ゲーだと。
1981年10月28日に開始された裁判で、アルネの弁護士、マーティン・ミネラ氏は悪魔に憑りつかれていての犯行のため、本人に責任はない、と無罪を主張します。
しかし判事のロバート・キャラハン氏はその主張を認めず、速攻却下。
『馬鹿こくでね』
当然すぎる展開。始まった瞬間、悪魔退場。
弁護側は急遽「アルネの正当防衛による無罪主張」に方針転換(当たり前だ)。
そんな話、映画にしても誰も観ないので、ここは裁判の行方はウォーレン夫妻の双肩に、という体にして後半戦。
『あなたたちの証拠集めに被告の命がかかっているわ』(仕事しろ弁護士)
今回の悪魔さんの特徴は、悪意ある誰かによって召喚された「出頭悪魔」だという事。
こちらとしては、
- 誰が何のために召還儀式を行ったのか。
- ウォーレン夫妻は悪魔の憑依を(裁判の過程の中て)どうやって証明するのか。
が興味の対象となるのですが、バッサリさっぱりオールスルー(いっそ清々しい)。
いつまで経っても裁判シーンにならないのでおかしいなぁと思っていたら、最後に「過失致死罪でアルネ有罪」という判決だけ出して幕。
えーっとそれってあれですか、死刑にならなかった=裁判所も悪魔の存在は認めて減刑した(結果ウォーレン夫妻大勝利)という誤認誘導ミスディレクションですか。
私としては中島らもが「ガダラの豚」で披瀝していたようなロジック(「聖書の記載は何かの例え話なのか?」「違う、全て本当の事だ」「なら悪魔もいるという事ですよね」みたいな)を聖職者の証人喚問とかを通じて展開していく過程が観たかったのですが、そういう挑戦的な試みは一切されておりませんでした。
最後にエド(ウォーレン夫)が学生時代の妻との思い出の場である東屋を庭に建てて「ああエド!」むっちゅむっちゅーで大団円。
私の脳内では「愛は勝つ」がリフレインされておりました。
いやしかし、あんたらの周りで結構な死人が出ているわけですが、それと自分らが無関係ってどうやって証明したの?
まさか「全部悪魔がやった事」とか言ってないよね。
★ご参考【生き残っただけでハッピーエンドにしちゃった投げっぱなしホラー3選】
★別の意味で悪魔の存在を証明した先達はこちら。
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★本日のTV放送【19:00~TOKYO MX/スクリーンMX1】
追悼:バーニー・マースデン
元ホワイトスネイクのギタリスト、バーニー・マースデンがお亡くなりになりました。
8月24日。72歳。ミッキー・ムーディと共にホワイトスネイクの屋台骨を支えたブルース・ギタリスト。ご冥福をお祈りいたします。
今日は「ザ・スネイクス」のライブを聴こう…。